| アルフィンは、朝目覚めると、いつものように隣で眠る夫を起こした。 朝食を作り、夫のエアカーを見送り、静けさの中で、やれやれと椅子に腰掛ける。 にぎやかに子供たちを送り出す嵐のような朝は、もう何年も前に終わっていた。子供たちは独立し、それぞれの生活を営んでいる。 エプロンを取り、鳥のさえずりと朝の美しい光を愛でながら、自分のために淹れた紅茶を飲む。
そして、思う。静かに。 今日は、11月8日だわ。
紅茶を飲み干すと、アルフィンはつばの広い帽子をかぶって庭に出た。 草花に水をやって、それから、いくつかの青い花を切って、部屋に戻った。 花瓶に生ける。そしてその花瓶を、キッチンの、自分にしか目に付かない場所に、そっと飾る。
また、あなたの誕生日が来たわね、ジョウ。 一年って早いんだから。また年をとっちゃったわ。
心の中で話しかけながら、アルフィンは、その青い花々を、静かに見つめた。
静かな住宅街の、二階建ての瀟洒な家。花と緑に溢れていた。 夫と、自分と、独立してもう家を出た子供二人。 光に溢れるキッチンに佇む、その家の初老の主婦の想いは、空を越え、星を越え、遥か。 宇宙の彼方へと。
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