| −−−−−−−サイアクだ。
なにがサイアクかというと、もう一言では言い表せない程だ。 世の中全てが間違ってる。 この世の中は理解し難い程の不条理と理不尽と、ついでに馬鹿なクライアントが持ちかけてくるアホらしい仕事のせいで崩壊寸前。
例えるならば。 クリスマスだというのに、そんなことはお構いなしにどんどこ仕事を依頼してくるボケのクライアントとか、 クリスマスだというのに、そんなことはお構いなしにどんどこ仕事を投げてくるアラミスのモウロクじじぃとか、 クリスマスだというのに、そんなことはお構いなしにどんどこ仕事を請けてくる阿呆のチームリーダーとか、 クリスマスだというのに、そんな阿呆に一言も意見も出来ず、セコセコと航路の確認なんかしちゃってる自分とか(大バカ!)、 そんな人間ばっかりだ!!
みんなみんな狂っているとしか考えられない。 せっかく全員分のプレゼントも用意して、美味しい食事も準備して、さあ、あとは皆を部屋に迎えに行くだけだったと言うのに。
−−−−−悪い、仕事が入った
だと?!
そんなチャラい台詞ひとつで今日一日の努力が水の泡だ!!!!
わなわなと震える肩を抑えつつ、ガチャン、と持っていたトレーを荒っぽくシンクの上に乗せる。 すぅ、と大きく息を吸い
「…馬鹿やろーーーーーーーーーーーー!!!」
とアルフィンは<ミネルバ>全体に響き渡るほどの大声で吼えた。
はぁはぁと息を荒げシンクに突っ伏していると不意に、背後からコホ、と咳払いをしている気配がした。振り返ると、そこには真っ青なクラッシュジャケットを着込んだ<ミネルバ>の阿呆の隊長。 彼は右手でその形のいい顎をさすりながら 「その”馬鹿やろう”ってのは俺のことか?」 と薄く笑う。 「べ・つ・に」 ツンとジョウから顔を背け、アルフィンはわざとがちゃがちゃと音を立てながらシンクにぶち込んだ食器を洗う。 「荒っぽいねぇ」 「あら、ごめんあそばせ」 悪かったわね。 どうせあたしは可愛くないわよ。 そんなことをブチブチと言いながら、アルフィンはキッとジョウを睨みつけた。
ジョウは苦笑をしながらアルフィンに言う。 「…仕方ないだろ。ホーリーのおっさんだって断れなかったんだ」 「あーそーですか。それはそれはお気の毒」 どうせウキウキしてるくせに。 未知の生物探索なんて、ジョウの冒険心をやたら煽る部類の仕事だと知っている。どーせ二つ返事でOKしたくせに、ホーリーのせいにするなんてこの卑怯者。 そう言うと、ジョウは少しバツの悪そうな顔をして、まあそりゃそうなんだが、なんてしゃあしゃあと言ってのける。 ホラみろ。 その態度が、期待と好奇心で一杯になっているのがモロばれだ。 アルフィンは一層心の中で地団駄を踏むしかない。
あーーーーーーー、むかつく!
ここいらがイライラの頂点だ。嫌味のひとつでも言ってやらなきゃ気がすまない。 ホント、いい気なもんだこと。
「そんなに仕事が好きなら、いっそのことホーリーと結婚でもしちゃえばいいのよ。この仕事バカ」 「冗談はやめろ。俺はアルフィン以外の誰とも結婚する気なんざないからな」
あーそう。そりゃよかったわね、と言いかけて、アルフィンは小さく瞬き。手先が台所用洗剤のシャボンで一杯のまま、ぽかんと口を開けてジョウを見る。
………え 、?
………今、なんと ? ?
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