| ミネルバは、白い雲の合間を優雅に飛行していた。 もっとも、そのクルーズもあと僅か。 3分後には、トリアノン宇宙港へと降り立つ予定である。
「う〜、わくわくするなぁ」
メインビジョンを眺めながら、リッキーが弾んだ声を出した。
「このチビ!降下準備の一つでもしてみろってんだ!ったく久々の休暇だからって、すっかり浮かれちまって。」
操縦桿を握りながら、タロスが毒づく。 だが、その口元には笑みがこぼれている。
「珍しいわよね。ウェザーコントロールのされていない惑星だなんて。こんなにたくさんの雲、滅多に見ないわよね」
アルフィンがジョウの背中に話しかける。
「そうだな・・・」
言葉少なく頷くと、すっと目を細める。 不意に飛び込んできた、海の蒼が眩しかった。
1時間後。 奇跡のような速さで一切の手続きを終えた4人は、深紅のオープンカーでハイウェイを疾走していた。目指すは、豪華客船レイディ・クリスタル。トリアノン宇宙港から少し離れた場所に停泊しているその船は、たっぷり10日間かけて付近の島々を巡る。気が向いた乗客は島で降りて観光をしたり、何もせずにただただ美しい海を眺めたり、またはプールやカジノで遊ぶことも出来る。
たっぷり時間をかけた、何にも増して優雅で贅沢な旅。
「古典的(クラシカル)な船旅っていうのもいいものよ」
面白くなさそうだ、という不満の表情を浮かべた3人を、アルフィンが必死に説得した。
「ただひたすら、寝て、食べて、泳いで、遊ぶのよ」
そこで3人は、ハタ、と気づいた。 彼女の台詞に”買物”の2文字が無い。 良く考えればわかることだ。 場所は豪華といっても飽くまで客船の中だ。 店があったとしても、その数には限りが有る。
ジョウはもとより、荷物持ちの名目でいつも休暇の数日をアルフィンのショッピングにつきあわされて潰されるタロスとリッキーは、すぐに承知した。
かくして。
4人はこうして、ここにやって来た。
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