| ありえない・・・絶対にありえない・・・。 目の前に広がる光景。 いや、この場合光景がありえないのではなくて、その人がその人らしからぬのであって。 そう。外見はジョウなのだ。間違いない。ジョウ本人である。本人なのだけど、言動がありえないのである。
柔らかな日差し。吹き抜ける心地よい風。 小高い丘に二人きり。最高なロケーション。 ジョウはあたしの髪を一すくい手に取り口付ける。 「綺麗だよ、アルフィン。」 これが男の色気とでも言うのだろうか。ゾクリとするほどの視線を惜しげもなくあたしに注ぐ。 一瞬、気が遠くなる。 その一瞬の隙をつかれ、距離を縮められる。 「アルフィン・・・」 その吐息は、あたしの頬に・・・・
「やぁぁぁぁーーーーーーん!!!こんなの、ジョウじゃなぁぁぁぁーーーーーーいっ!!!ヽ(`Д´)ノ」
はっと目覚める。 あぁ、夢。やはり、夢だったのか。なんか惜しいことしたのかも。夢なら、あのまま甘い一時を楽しめば良かったかな。 ぼんやりそんな事を考える。 が、考えても仕方がない。ベットから降り、身支度を整える。 昨日から休暇だ。今回のバカンスは高原を選んだ。 海も良いが、たまには趣向変えも必要でしょ?と意見すると、案外皆賛成してくれたのだ。 さぁ、皆のところへ。と思ったところに 「アルフィン、良いか?」 とドア向こうからジョウの声。 「えぇ、どうぞ。」 カチャリ。カタン。とドアの開く音、締まる音。 別段、何のことはない普通の音。なのに、妙に大きく聞こえた。 何故なんだろう?と首をかしげていると 「アルフィン。」 何時の間にか背後にジョウが居た。それも、ぴったりと背中に張り付く位の距離に。 「え?」 っと、慌てて振り向くとイキナリぎゅっと抱きしめられる。 「えぇぇぇぇぇ!?」 パニックになるな。と言うほうが無理であろう。 「アルフィン」。 思考がグルグルしているのに、耳元で甘い吐息と共に名を呼ばれれば腰砕けになっても仕方ないと思う。 「んんっ!」 ぶるっ。っと身震いしてしまう。突き飛ばそうにも身体に力が入らない。 そんな事を思っていたら、ふわり。と一瞬の浮遊感。 気がつけば、天井が見える。え?天井?そうしていると、今度は視界いっぱいにジョウの顔。 「アルフィン・・・。」 ジョウの吐息が唇までかかり始めて・・・・
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛―――――っ!?ジョウ、どうしちゃったのぉぉぉぉーーーーー!?ヽ(`Д´)ノ」
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