FAN FICTION
(現在 書庫3 を表示中)

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

[ 最新小説及び続き投稿フォームをトピックトップへ ]

■90 / inTopicNo.21)  Re[20]: 雪降る温泉宿♪
  
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/31(Fri) 20:59:20)
    朝食を済ませた4人は、ロビーで待っている番茶の所へと急いだ。
    「おはようございま〜す♪」
    なんとも間のぬけた声を出す番茶。
    「あ、あぁ、おはよう。」
    ジョウは引きつりながら挨拶をする。他の3人はずっこけて倒れている。
    「皆さん、なんで倒れてるんですか?」
    これまたマヌケなコトを聞く番茶。しょうがない。こいつは自分が原因だなんてこれっぽっちも思っていないのだから。
    「い、いいや、んなコトはいいから、早くゲレンデに行こうぜ!!」
    ガバッと飛び起きたリッキーが番茶に言う。
    「あぁ、そうですね。では、でっぱぁ〜つ♪じゃなくて、出発〜♪」
    うけると思ったのだろう。明るくオヤジギャグを飛ばす番茶。
    これにはさすがのジョウも、他の3人同様倒れこむのであった。

    そんなこんなで、ゲレンデにやって来た5人。
    「皆さん、“ゆきだるま”作りましょう。」
    突然、番茶が言い出した。
    「ユキダルマ?」
    4人は頭を傾げる。
    「なに、その、“ゆきだるま”って?」
    アルフィンが番茶に聞く。
    「えっとですね。説明するとまどろっこしいので、ミニ版を私が作りましょう。で、その後、大きいのを作りましょう。」
    と、言いながら番茶は小さい雪の塊を2つ作り始めた。
    「ちょっと大きさを変えて、小さい塊を頭にするんです。で、大きいのを体にしてですね、」
    説明をしながらゆきだるまを作る番茶。
    「眼は柊の実でっと、腕は木切れでっと、」
    鼻歌まじりにミニゆきだるまを作る番茶。
    「へ〜〜、おもしろそ。」
    リッキーは興味津々で、番茶の作る“ミニゆきだるま”を見ている。
    「あら、意外とかわいいわね。」
    ひょいっと、アルフィンもリッキーの後ろから顔を覗かせる。
    「・・・こりゃ、スコップがいりますな。借りてきますわ。」
    結構乗り気のタロスが、ロッジに向かった。
    「皆、子供だね〜。」
    苦笑しているジョウであったが、でかい“ゆきだるま”にはどの眼がいいか、腕は何にしようかと辺りをキョロキョロしているのであった。(笑)

    タロスがロッジからスコップを借りて帰って来た頃には、すでにジョウとリッキーが雪だまを作り始めていた。
    「お〜い、タロス!早く来いよっ!」
    リッキーが手を振る。
    番茶とアルフィンは“雪うさぎ”を作っている。
    「ね〜、見てみて!!可愛く出来たでしょ?」
    得意そうなアルフィンの足元には、30cmほどの“雪”で作った“うさぎ”がいた。眼は柊の実、耳は笹の葉をつけていた。
    「上手く出来てるじゃないか。」
    ほ〜と感心したようにタロスが言う。
    「上手いですよっ!!アルフィンさんは、器用でらっしゃるから!!」
    鼻息も荒く、自分が褒められたように番茶が言う。
    「あら、ありがと♪」
    アルフィンがにっこり笑って、番茶に微笑みかけたもんだからさあ、大変。
    ぷっしゅ〜〜〜〜。真っ赤になって、失神寸前。
    ・・・な〜んて単純なんでしょう。ある意味、ジョウと張り合うものを持ってる番茶。
    そこへ。
    「タロース、頭の部分、持ち上げてくれよ。重くておいら達には無理だよー。」
    リッキーがタロスを呼ぶ。
    「お〜、今行く。アルフィンはどうする?」
    「私も行くわ。番茶さんはどうする?」
    アルフィンに問いかけられ、
    「も、もちろん、アルフィンさんの行く所この番茶、どこまでもお供いたしますっ!!」
    えらい気の入りようである。
    番茶の勢いに引きながらも、
    「あ、あら、それは嬉しいわね。」
    と、一応礼を言うアルフィン。
    「ほれ、行くぞ。あまり待たせると、チビが喧しくなる。」
    あ〜あ、と片手を額に置いたままタロスが急かした。
    「そうね、いきましょ。」
    アルフィンはそう言うと、ジョウの所へ駆け出した。
    「ああ、走る姿も美しい<ポッ。」
    はうぅ〜とため息をつく番茶。
    「・・・好きにしてくれ。」
    タロスは頭を抱えたまま、アルフィンの後を追った。

    よっと、タロスが掛け声1つ出して、“ゆきだるま”の頭部分を胴体の雪だまの上に載せた。
    ふぇ〜〜〜っと、度肝を抜かれた声を出す番茶。
    上下合わせた“ゆきだるま”は、ジョウの背丈ほどになっていた。
    「タロスは体の大部分をサイボーグ化してるの。」
    アルフィンの説明を受けながら、へ〜、と感心?する番茶。
    「それより。ねぇ、腕は笹でどう?」
    さっき“ゆきうさぎ”を作ったときに採ってきた笹を枝ごと“ゆきだるま”の腕部分に刺してみる。
    「あら、いいじゃない?」
    ねっ、とジョウの方を向いて同意を求める。
    「ああ、いいんじゃないか?」
    ジョウも笑いながら応える。
    「眼は、この石でどうかな?」
    リッキーは自分の拳ほどの石を2つ、何処からか持ってきていた。
    「よっと。」
    眼の部分に石を食い込ませる。
    「お〜、いいじゃん♪」
    「スコップ、無駄になりましたな。」
    笑いながらタロスが言った。
    「じゃ、そのスコップで穴掘って、タロスを雪埋めにするとか。」
    きひひひっと、リッキーが笑う。
    「その前にお前を埋めてやるっ!!」
    リッキーにつかみかかるタロス。
    「つっかまんないよ〜〜〜ん♪」
    「こらっ!待てっ!!!」
    ヒョイヒョイとリッキーは逃げる。ドカドカとタロスがその後を追う。
    「あの〜、いいんですか?」
    番茶はおろおろして、ジョウとアルフィンを見る。
    「ああ、いつもの事だ。ほっとけばじきに戻ってくるさ。」
    くすくすと笑っているジョウ。
    「ねぇ、ジョウ。ソリしない?こないだ人が乗ってるの見て、面白そうだったの。」
    ツンとジョウをつついて、アルフィンが言う。
    「ああ、いいぜ。で、ソリってのは?」
    うん?とアルフィンの方に頭だけ向けて答えるジョウ。
    「へへっ、もう、借りて来てるの。」
    2人乗りのソリを後ろから引っ張り出すアルフィン。
    「じゃ、番茶さん。私達、滑ってくるわね。」
    行きましょ、と、ジョウの腕に自分の腕を絡ませるアルフィン。
    ジョウはアルフィンからソリを受け取り、引っ張る。
    じゃ、と番茶に片手を上げるジョウ。
    その動作があまりにも自然で、声を掛ける事さえ出来ない番茶。
    呆然と2人を見送り、1人取り残されるのであった。
引用投稿 削除キー/
■149 / inTopicNo.22)  Re[21]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/07/17(Wed) 20:20:22)
    「ねぇ、どっちが前に乗る?」
    アルフィンがジョウに聞く。
    「俺。」
    “アルフィン前にしたら、何処突っ込むか分らん(焦)”
    言えないので、心の中で付け加えるジョウ。
    「そう。分ったわ。」
    “じゃ、おもいっきりしがみ付いちゃお♪”
    言ったらジョウは照れまくるので、心の中で付け加えるアルフィン。
    ・・・似たり寄ったりの2人(笑)
    2人を乗せたリフトはゲレンデの頂上に着いた。
    「よっと」
    ジョウがソリにまたがる。
    「んっしょ」
    その後ろにアルフィンが抱きつく。
    「しっかり捕まってろよっ!」
    「んっ!!」
    「それっ!」
    ズザザザッ。
    勢いよく滑り出していくソリ。
    「きゃぁ〜♪」
    悲鳴!?を上げ、更にジョウにしがみ付くアルフィン(楽しそうであるが。)
    「うぅわっ!!」
    バランスが崩れそうになるのを、なんとかもち直すジョウ。
    “む、胸があたるっ!!・・・や、やわらかい・・・・。”
    焦りと、嬉しい(!?)のとがごちゃまぜになり、ジョウの思考は吹っ飛んだ。

    ゲレンデの下で2人の様子を指を咥えて見ていた番茶。
    様子がどうもおかしい。
    「あ゛〜〜〜〜〜、そのまま行ったら危ないですぅ〜〜〜!!!」
    鳥が首絞められたような声で番茶が叫ぶ。
    ・・・叫んだだけ。2人のソリは、そのまま林の奥へと消えていった。
    「あぁ、行ってしまった・・・って、まずいぢゃん!!タ、タロスさんを呼びに行かなくっちゃ!」
    番茶はそう叫ぶと(叫んでばっか・・・)タロス達の所へ駆け出していった。
    ・・・駆け出したはいいが。
    「あ〜〜〜、タロスさん達、何処行ったんだろう!?」
    そう。タロスはリッキーを追いかけて行ったのである。“何処”へ追いかけて行ったかは番茶は知らない。
    「うわぁ〜〜〜〜〜(絶叫)」
    おろおろおろおろおろおろおろおろおろおろおろ。(滝汗あーんど滝涙)
    ひたすらにどんくさい番茶であった。

    そのころ。
    「う〜〜〜、やーっとタロスを巻いたぜ。さて、兄貴達んトコへでも戻るか。」
    後ろを振り返りつつ逃げていたリッキーはタロスの姿が無いのを確認してゲレンデへ足を向けた。もちろん、今来たコースとは別コースを選ぶ。
    「鈍足タロスを巻くのは簡単〜♪ドテトデ走れば足絡まるしぃ〜♪」
    即興でとんでもない歌(!?)を歌うリッキー。
    ご機嫌に足を運ぶ。
    ゲレンデに差し掛かった頃。
    「・・・リッキぃ〜〜〜〜。」
    地の底から響いてくるような不気味(笑)な声。
    「げっ!!タ、タロスっ!!!」
    びくっと後ろに飛びのき、逃げ出そうとするが、すでにタロスに首根っこを押さえられていた。
    「こいつぅ〜〜〜〜、どうしてくれようか。」
    ニヤリ。不気味にタロスが笑う。
    「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜〜!!」
    なんとも情けない声を上げるリッキー。
    リッキー、絶体絶命!か?(!?)
    そこへ。番茶のなんとも情けない絶叫が2人の耳に届いた。

引用投稿 削除キー/
■243 / inTopicNo.23)  Re[22]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/10/19(Sat) 16:57:07)
    あたふたしている番茶から、事の顛末を30分かけて聞き出したリッキー。
    「しかしな、もっと簡単に説明できんのか。」
    頭を抱えてタロスが言う。
    そう言いたくもなる。
    なんせ、ゲレンデ脇の林に、ジョウとアルフィンが突っ込んでいった(!?)これだけを説明するのに30分だ。
    いかに、番茶がパニックになっていたからと言って、ここまでくると普通じゃない。
    「あぁ、すいません、すいません(泣)」
    うるうるしながら番茶が言う。
    「・・・あー、もういいから、その林に案内してくれ。」
    げんなりしながら、タロスが番茶を急かす。
    「こ、こっちですっ!」
    はっとして、猛ダッシュで現場に向かう番茶。
    「・・・おい。おいら達は無視なのかよ・・・。」
    ガックリと肩を落とすリッキー。
    「ま、なんにせよ、ジョウとアルフィンが林の中に突っ込んでったのは確からしい。大丈夫だとは思うが念のために探しに行こう。」
    ポンとリッキーの肩を叩き、林の方へタロスは歩き始めた。


    さて。その頃ジョウとアルフィンは。
    「あ〜ん、もー信じられないっ!!」
    ぶつぶつ文句を言いながら、体の雪を払うアルフィン。
    林に突っ込んだ後、木に体当たりこそしなかったが、雪溜まりに突っ込んで止まった為、2人共雪まみれになっていた。
    隣接して立っていた木を避けながらこれたのは、ひとえにジョウの反射神経があってこそだったのだが。
    「も〜、ジョウが林になんか突っ込むからこんな目に会ったっのよっ!!どーすんのよっ!!」
    アルフィンはおかんむりである。もちろん、自分の事は棚の遥か上に上げている。
    「んっな事言ったって・・・。」
    こーゆー場合、逆らわないのが生き残る(!?)術なのだが、つい、一言漏れ出てしまった。
    「あ〜んですってぇ〜〜〜〜〜っ!!」
    鬼の形相のアルフィン(うわっ、むっちゃ怖っ!<笑)
    「ま、とりあえず、ここを抜けなきゃな。」
    さすがに修羅場(!?)を山程切り抜けているジョウは、話題をそっちへ持っていった。
    文句を言い続けているアルフィンに
    「行くのか?行かないのか?」
    と、少し凄んで見せる。
    「・・・んっもう。行くわよっ!」
    プイッとそっぽを向きながらでも、アルフィンの右手はジョウの腕に絡まっている。
    “あー、言ってるコトと、行動が別モンだぜ。ま、いつものコトだけど。”
    苦笑しながら、ジョウは空いてる手でソリを引きずりながら前に歩き出した。


    「あ゛〜〜〜〜っ!!、どうしましょ、どうしましょーーーーーっ!!(滝泣)」
    番茶はずーっと喚いていた。
    「だーーーーーーっ!!!五月蝿いっ!!気が散るっ!黙ってろっ!!」
    その度にリッキーは怒鳴っていた。(ご苦労さん<^^;)
    「ここから林に突っ込んでいったんだな?」
    そんな2人を完全無視してタロスが要点だけを聞く。
    「あぁ、こ、ここです。間違いありません。」
    ソリの跡が少しだけ残っていたのだが、他にもソリを使って遊んでいる客はいるので、念のために番茶に確認したタロス。
    「じゃあ、ここからは俺達だけでいいから、あんたはホテルに帰ってな。」
    そう言うとタロスとリッキーは林の中へ分け入っていった。
    「そ、そんなー、私も行きますぅ〜!」
    「来んなっ!!テメーが来たら、超ド級の足手まといになるんだよっ!!」
    すかさずリッキーがトドメを刺す。
    「あう〜(涙)」
    番茶はその場所に突っ伏して何か言っていたが、タロスとリッキーは構わないコトにした。
    そりゃそうだ。構ってた日にゃ〜、何時までたってもジョウ達を見つけ出せない。それどころか、一生会えないかもしれない(大袈裟でないかも<^^;)
    「なぁ、タロス。どう探す?」
    「そりゃ、この跡を辿っていけば良いだけのコトさ。」
    タロスは足元にある僅かに残ったソリの跡を指差す。
    「楽勝っ!」
    ガッツポーズを決めながら、野うさぎのように駆けていくリッキー。
    「おいおい、オメェーまで遭難するなよ。」
    「早くココを離れないと、番茶が追っかけてくるぜ!?」
    「そりゃコトだ。さっさと行こう。」
    笑いながらタロスはリッキーの後を追った。
引用投稿 削除キー/
■368 / inTopicNo.24)  Re[23]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/12/13(Fri) 20:06:50)
    「ねぇ、ちゃんとゲレンデの方に戻ってるの?」
    2時間程歩いた頃。アルフィンが心持不安そうに聞く。
    行きは滑ってきたから、帰りに時間が掛かるのはしかたないと思っていた。が、いくらなんでも時間が掛かりすぎる。
    「うーん、なんかヤな予感がしたから、ゲレンデ方面はよしてこのまま林を抜ける。」
    そう。ジョウのヤな予感ってのは当たっていた。そのままゲレンデ方向に戻っていたら、番茶の“良かったですぅ〜!<号泣>”攻撃に半日程耐えねばならなかっただろう(爆)
    「えぇ〜!?予感ってなによっ!?ちゃんと戻れるんでしょうね!?」
    半ば呆れてアルフィンはジョウを睨む。
    「大丈夫さ、うん。たぶんな。」
    あさっての方向を見ながら答えるジョウ。
    「たぶんって、ちょっとぉ〜。」
    半泣きのアルフィン。
    「なんとかなるだろう。ま、いざとなったら野宿さ。」
    すでに、日は傾きはじめていた。冬の日暮れは早い。
    「野宿って、なんの装備も持ってきてないのよ!?食料だって・・・」
    と、アルフィンがスキーウェアのポケットから出したモノ。
    チョコ1枚、ビスケット1袋(クラッシュパック装備品<何故に!?>)、ポテチ(小)キャラメル1箱、キャンディー1箱。
    「・・・そんだけありゃ、2〜3日大丈夫だな。」
    溜息をつきながらジョウが取り出したのは。500mlのミネラルウォーター1本とライター。
    「ジョウはそれだけ?」
    「普通、これ持ってるだけでも凄いと思うがな。アルフィンが凄すぎるんだよ。」
    「だって、皆で食べようと思ったんだもん。それに、野宿って。凍えちゃうわよ。」
    「雪を凌げる場所が1ヶ所くらいあんだろ。」
    「もー、気楽でいいわね・・・<溜息>」
    「いざとなったら、くっついて寝ればいいさ。<ニヤリ>」
    「///ジョウのえっちぃぃぃぃぃーっ!!」
    ドコッ!!
    アルフィンの“必殺J殺し”炸裂(核爆)クリーンヒットッ!!←映画参照(大笑)
    「ぐふっ。」
    とある場所(笑)を押さえて屈み込むジョウ。
    「・・・もう、ジョウが悪いんですからねっ!///」
    「・・・」←言葉にならないが、なにか言いたかったらしいジョウ(爆)
    「もう、本当どうすんのよーっ!!」
    空しくアルフィンの叫びだけが林に木霊した。


    さて、こちらはタロスとリッキー。
    「なぁ、番茶撒いたのはいいけど。兄貴達何処まで行ったのかな?」
    「さぁ〜て、ソリの跡はここまでだからな。」
    タロスは足元の雪溜まりを見た。そこからは、2人の足跡が林の奥へと続いていた。
    「?兄貴達、なんでゲレンデに戻ろうとしなかったのかな?」
    腕組をしながら頭を傾げるリッキー。
    「・・・悪寒がしたんだろ。」
    「なんで?」
    「アホ。ゲレンデに戻ったら、番茶が居るだろが。」
    「あ、あぁ〜。(納得)」
    ヤレヤレと、タロスは頭を振って。
    「ほれ、行くぞ。」
    ほーほー言ってるリッキーを残して、足跡の続いてる林の奥に向かった。
    「あ〜、待ってくれよーっ!」
    リッキーは雪ウサギの如くタロスの後を追った。
    「しっかし、何処まで行ったのかな?」
    「ジョウ達が林に突っ込んで、既に1時間は経ってる。雲行きも怪しいし日暮れも近い。早めに探さないと装備ナシで野宿だぜ。」
    「げっ!嫌だよ。仕事でも無いのに野宿なんて。おまけに装備ナシたぁ。(汗)」
    なんとも情けない顔をするリッキー。
    「ボケなすびっ!だから早く探すんだよ!ま、本当は俺達ゃ部屋で待っててもいいんだが、番茶に付き合うよりゃまだマシだろが。」
    「・・・うん。すげーマシ。」
    その場面を想像したのか、げんなりしたリッキーが答える。
    「納得したなら急ぐぞ。このまま下りゃぁ、3時間程でホテルに着くはずだ。ジョウもそれが分ってて行った筈だ。・・・迷わなけりゃな。」
    「じゃ、雪が降り出す前に見つけなきゃ。足跡が消えちまう。」
    「ほー、珍しく分ってんぢゃねーか。ならグズグズせずにとっとと行くぞ!」
    ドカドカ雪を掻き分けながら進むタロス。
    「タロスこそ遅れんなよっ!」
    ピョコピョコ跳ねながら、あっ!と言う間にタロスを追い越すリッキー。流石に身軽なリッキーの方に分がある。
    どうにも悔しいタロスは。
    「うっせー、このクサレトンカチッ!」
    と、悪態を付きながら、ラッセル車の如くリッキーに突進して行く。
    「へっへ〜ん。追いつけるモンなら、追いついてみやがれってんだっ!」
    「こっの、クソガキがぁ〜っ!!(怒)」
    ・・・既に。ジョウ達の捜索ってのは頭の隅にもない2人。しかし、幸いにも進んでいる方向はジョウ達の進んで行った方向であった。(笑)


    さてさて、その頃番茶は。
    「うーん、大丈夫でしょうか?どうなんでしょうか?」
    タロスとリッキーが林に入って行って1時間。
    2人を見送った場所で行ったり来たりしていたのであろう。番茶の両サイドだけ雪が無い。(爆)
    「これはやはり、ホテルの人に頼んで捜索してもらうしかないっ!!」
    ぐっ!と拳を握り締め、ぐぐぐぅ〜っ!と空を睨み付ける番茶。(おいおい)
    そして、5分程そのホーズを維持。(笑)
    人々は、番茶をおもいっきし!避けながらゲレンデに向かう。←当たり前だ(^^;
    「ままぁ〜、あのおぢちゃん面白いね〜♪」
    年端も行かぬ子が、番茶を指差す。
    「これ、指ささないのっ!さ、早くソリで遊びましょうね。(焦)」
    母親らしき女性が、ハラハラしながら子供に注意する。
    「なんで?面白いおぢゃん見ちゃだめなの?」
    「・・・人をジロジロ見てはいけません。失礼でしょ?」
    「失礼?ぢゃ、あのおぢちゃんは“失礼なおぢちゃん”なんだね!」
    悪びれもせず、“本当のコト”を言う子供。(核爆)
    「こ、これっ!さ、行くわよっ!!」
    焦った母親は、子供を半ば引きずってその場を後にする。
    好き放題言われていた番茶は。
    「さあっ!急いでホテルに戻るぞっ!!」
    ・・・母子の会話はまったく聞こえていなかったらしい。(笑)
引用投稿 削除キー/
■539 / inTopicNo.25)  Re[24]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2003/10/19(Sun) 15:00:56)
    「ねぇ。まだ着かないの?」
    あれから更に1時間経った頃。
    「・・・ん〜。ヤな予感がしたから、少し遠回りしてる。」
    「え゛〜!?また予感?いい加減にしてよっ!もう日も暮れちゃったじゃない。寒いし、お腹減ったし・・・。」
    ぶんむくれ状態のアルフィンだったが、既に周りは薄暗く、雪も勢いを増しつつある状態。心なしか、声も小さい。
    「それもそうだな。少し、休憩するか。そこでちょっと待ってろ。」
    流石にヤバイかと、雪と風が吹きつけない木陰にアルフィンを座らせる。
    今まではおどけてアルフィンを相手にしなかったジョウだが、流石に3時間以上もアルフィンを引っ張りまわしている事に少々罪悪感を感じていた。
    「うん。」
    かなり疲れている様に見えるアルフィン。
    “こりゃ、マヂなんとかせにゃ・・・。”
    後での噴火を恐れたのもあるが、これじゃ、折角の休暇が台無しである。休息しに来たのに、疲れてちゃ意味がない。
    ジョウはあまり風の来ないような場所を見つけ、そこに雪を運び始めた。
    「ねぇ、なにしてるの?」
    暫くして、ジョウが何をしだしたのか理解出来ないアルフィンが聞く。
    「あぁ。“かまくら”ってのを創ってる。ま、雪の簡易シェルターってトコかな?」
    「ふ〜ん。」
    さも珍しく、不思議なモノを見るような視線を、ジョウと“かまくら”の出来かけ(笑)に向けるアルフィン。
    「アルフィン、すまないが、近場で枯れ枝集めて来てくれないか?だけど、俺の見渡せる範囲内でだ。」
    「分ったわ。でも、枯れ枝あるかしら?」
    少し気分が楽になったアルフィンがチョコを銜えながら腰を上げる。ジョウにも一欠けら銜えさせる。
    「ま、無かったらしょうがない。俺を湯たんぽ代わりにしな。」
    あっと言う間にチョコを食べ、クスクス笑いながら作業を続けるジョウ。
    「もうっ!知らないっ!!!」
    少し頬を赤くしたアルフィンは、踵を返して枯れ枝を探しを始めた。
    ギリギリジョウが見えるところまで来たアルフィンの目に、湯煙が見えた。
    「源泉でもあるのかしら?」
    ジョウの視界から外れてしまうが、確認に行く事にしたアルフィン。
    雪を掻き分け、木立を抜けた(無理やり)先に広がっていた光景は・・・。
    「ジョォーッ!」
    アルフィンの叫びに驚いたジョウは、何があったのかと作業を中断して声のした方向にすっ飛んでいく。
    「何処だ!?アルフィンっ!!!」
    姿を確認出来ないジョウは、アルフィンを求めて叫ぶ。
    「此処!此処!!!」
    両手をブンブン振り回して、木立の中から出てくるアルフィン。
    「どした!?何があったんだ!」
    直にアルフィンを自分の背後に庇い、前方を見据えるジョウ。
    「違う、違うっ!温泉っ!温泉があるのっ!!!」
    「は?温泉?」
    「この先に、温泉があるのっ!看板もあって、“冬季閉鎖”って書いてあったの。多分、ここまでシールドを張る予算がなかったのね。」
    ・・・ミもフタも無い言い方である。
    後日、予算の為ではなく、環境問題の為にシールドを張れなかった事が判明するのだが、今はそんな事はどうでも良い。(笑)
    「まぁ、さっきの所よりは暖を取れる。こっちへ移動だな。」
    「ね、ついでだから、入っちゃわない?」
    さっきとは打って変わった機嫌の良さ。
    「上がった後、どーすんだよ。タオルなんぞ持っちゃいねーぜ?」
    何を言ってるんだとばかりにジョウが言う。
    「ふふー♪それがね、脱衣所がちゃんとあってね。もちろん、バスタオルも少しあったわ。休憩室の中には“囲炉裏”っての?があるのよ。インテリアかなと思ったんだけど、ちゃんと使えるみたい。薪も少しだけど、ストックがあったわ。」
    「・・・ちょっと聞くんだけどな。」
    やーな予感がしたジョウは、恐る恐るアルフィンに質問をする。
    「なーにー?」
    「ロック、掛かってなかったのか?」
    「ロック?掛かってたわよ?」
    「普通、ロック掛かってたら開かないよな?」
    「そんなの、当たり前じゃない。」
    「なんで中の様子、そんなに詳しいんだ?」
    「だって。見て来たんだもん。」
    「・・・ロック、閉まってたんだよな?」
    「開けたわよ。」
    「解除キー無いのに?」
    「この状況じゃない。許してくれるわよ。」
    さも“しょうがないじゃない。”と言うアルフィンに目眩を覚えるジョウ。
    こんな事なら、ヤな予感がしてもゲレンデに戻るんだったと思っても後の祭り。
    (果たして、番茶とこの状況と比べると、どっちもどっちなのだが・・・。)
    そうこうしているうちに、脱衣所兼休憩所の入り口に来て見ると。
    ジョウは絶句した。壊してると言っても、必要最低限部分だけだと思っていた。思っていたが・・・。
    ロック機能が付いてるべき場所は、見事に粉砕(!?)されていた。
    “あちゃ〜。・・・どうやったらこんなになるんだよ・・・。”
    頭を抱えるジョウ。
    幸い寒さを緩和する為、内側にもう1つ扉が付いていた。こっちにロックキーが付いていなかったのが、不幸中の幸いだ。
    まぁ、これで寒さを凌げるとジョウは思ったのだが、そんな事はまーったく気にもしていないアルフィン。(そりゃそーだ。気にしてたら、扉に穴が開くほどロック機能を粉砕しないってば。<汗)
    “どうやって壊したかは聞くまい・・・。”
    溜息を付いているジョウに、“早く入りましょうよ。”と声を掛け、自分はさっさと入っていく。
    「んも〜。すっかり身体が冷えちゃったじゃないっ!せっかく温泉見つけたんだし。温まらなくっちゃ♪」
    室内に入るなり、入浴準備をするアルフィン。
    「それに、“閉鎖”ってしてあるから、貸切よぉ〜♪」
    不機嫌だったのは何時のコト?ってな具合に、アルフィンはルンルン♪気分で、さっさと支度をし、女風呂の暖簾を潜り抜けて行った。
    「・・・どーすんだよ、コレ。」
    そんなアルフィンの後姿を見ながら溜息を付くも、ドアが元に戻るコトはない。
    「しゃーねーか。あとで弁償だな。それより、火を熾しとくか。」
    一応、表のドアを閉め、内側のドアも閉める。囲炉裏に火を熾し薪をくべる。火に勢いが付いたのを確認し。
    「じゃ、俺もひとっ風呂浴びようかな。」
    クキクキと両肩をほぐしながら、ジョウはアルフィンの置いていったタオルを持ち、男風呂の暖簾を潜り抜けた。
引用投稿 削除キー/
■580 / inTopicNo.26)  Re[25]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2003/12/21(Sun) 14:09:51)
    「あ〜あ。タロスは鈍足だよな〜。これじゃ、兄貴達に追いつくのに日が暮れちまわー。」
    雪兎のように、ピョンピョン飛び跳ねているリッキー。
    もちろん、タロスの遙前方で。である。
    「こんっの、クソちびぃーっ!」
    ・・・この追いかけっこは既に2時間続いている。吹雪のほうは幾分落ち着いたとはいえ、風と雪はまだ強い。
    「へへ〜ん♪追いつけるモンなら、追いついてみやがれってんだぁ〜♪」
    調子に乗ったリッキーは、更にタロスとの距離を開ける。(一応、相手が確認出来る距離だが。)
    「くっそぉ〜っ!待てっ!!!このどぐされチビっ!!!!!」
    そんなタロスの罵声も馬に念仏。どんどん距離を開けられる。
    ブツブツ言いつつも、先へは進まなければならない。
    「んっとに、今回の休暇は、踏んだりけったりだ・・・。」
    グチを言わねば、やってられない。タロスは、恨み言を羅列しながらリッキーの後を追う。
    「うぎゃーっ!」
    そこへリッキーの悲鳴が聞こえた。流石に徒事ではない叫び声に、タロスは瞬時に反応する。
    今までのノロノロペースは何処えやら。リッキーの声のした方へとすっ飛んで行く。
    そこで見た光景は・・・。
    「タ、タロスーッ!助けて〜!!!」
    泣きながら逃げ回るリッキーの姿。そのリッキーを追っているのは。
    「く、熊だぁ〜よぉっー!!!(涙)」
    やばい。小柄なリッキーがそのパンチを食らったら、あの世行きなのは間違いない。
    ぐぉぉぉぉぉぉーっ!との雄叫びとともに、タロスは熊とリッキーの間に割り込んだ。

    ***********************************

    「や〜ん♪気持ち良い〜♪♪♪」
    ジョウより一足先に湯に浸かって絶叫(?)を上げているアルフィン。
    「ん〜。やっぱ、寒いトキには温泉よねん♪」
    フフフゥ〜ン♪と、鼻歌が出る程ご機嫌なアルフィン。
    湯煙を見つけたとき、期待せずに状況確認に行ったアルフィンは、意外に綺麗な小屋と、結構広く、岩を組んで造ったと思われる直径10mはあろうかと思われる露天風呂。(周辺を歩いて確認したらしい。)しかもその造りは、自然に溶け込み違和感がまったくない。
    全てを見渡せるのではなく、湯船の所々に大きな岩が配置してある。
    アルフィンは、泳いで(おい・・・。)一番端の方まで来ていた。もちろん、湯煙と吹雪の為、脱衣所は見えない。
    一方ジョウは、やっと湯船に浸かった所だった。
    「ふぅーっ。一息付くな。」
    ずずずずず。一気に鼻先まで湯に浸かる。
    「しかし、向こう側も見えないとは・・・。」
    そう。どんな露天風呂かジョウは知らなかった。そして今も。
    「幾分落ち着いたが、こりゃ今夜は此処に泊まりかな。」
    ジョウの目の前の光景。それは、湯煙と雪が混ざり合い、渦巻いている光景だった。
    「泊まりとなると。薪は1晩分くらいはなんとかなるか。明日は朝一番で・・・。」
    ブツブツと、明日のプランを練るジョウ。その前方から、バシャバシャと水音がする。ジョウは、
    「?」
    となるが、そんな水音を出しながら近付いて来るのは1人しか居ない。
    「あ、あわわわわ。」
    慌てて、姿を隠そうとするものの、適当な岩陰は無い。水音からして、脱衣所に逃げ込む時間も無い。
    しかたないので、水音のする方とは身体を逆向きする。
    ・・・正面を向いていたら、死が待っている。(笑)
    程なく、水音の主が現れ、
    「ん〜♪温まった〜♪少し、脱衣所で涼も・・・・・?」
    ピタッ。水音が止む。ジョウは、冷や汗をかきつつ、相手の反応を待つ。
    「え?え???えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!?」
    バシャーッ!そのまま、3メートル程一気に後退した気配。
    「な、な、なんでジョウが居るのーっ!?」
    アルフィンは絶叫した。それにジョウは。
    「・・・俺も知りたいよ。」
    半泣き状態で答える。
    「ここは女湯よっ!?どーしてジョウが居るのよっ!?」
    キーキー金切り声を上げるアルフィン。
    「俺は、男湯に入った。間違いない。そこが男子脱衣所だ。」
    ジョウは、アルフィンに背中を向けたまま、男子脱衣所を指差す。
    「本当?」
    半信半疑なアルフィン。
    「バカっ!んな事で俺がウソ付くかっ!」
    やけくそなジョウ。
    『・・・・・・・・・・・・・。』
    無言の2人。
    「もしかして、ここ。混浴ってコト?」
    思い当たるコトをアルフィンが言う。そういえば、手ごろな看板を叩き壊し、それで入り口の鍵を壊した。もしかして、その看板・・・。
    アルフィンは、サーっと血の気が引く音を聞いた。
    「・・・どうも、そうらしい。」
    「いやーんっ!!!!」
    アルフィンは、絶叫しながら、もと来た所を凄まじい勢いで逆走して行った。
    「うぅ〜。」
    どうしたもんかと、ジョウは思った。こりゃ、とっとと上がった方が良さそうだ。そう思い、ザバっ!と身を起したところに。
    ザバーンっ!
    何か重い物体が湯に落ちた音がした。しかも、アルフィンが逃げて行った方向。
    「きゃーっ!!!」
    直にアルフィンの悲鳴が聞こえた。
    「アルフィンっ!」
    ジョウは、自分が裸だという事も忘れ、アルフィンの声がした方へダッシュする。
    雪と湯煙の向こう側に、座り込んでいるアルフィンの金髪と白い肢体が見えた。
    「アルフィンっ!」
    姿を確認し、叫ぶ。
    「ジョウっ!」
    アルフィンも、ジョウの声に反応する。ジョウの胸に飛び込む。もちろん、2人共自分達が裸だという事は忘却の彼方である。
    「ってててて。」
    人間の声がする。しかも、もの凄―く聞きなれた、忘れようも無い声が。
    『リッキーっ!?』
    「へ?」
    ぽかーん。と、間抜け面を晒すリッキー。
    タロスに引っつかまれ、投げ飛ばされたら湯に落ちた。んでもって、目の前には、裸で抱き合うジョウとアルフィンが。リッキーの思考回路は停止する。
    “グガーっ!”
    “こーんのぉーっ!?どぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!”
    ガツっ!ドゴっ!ガキッ!
    何かの大型獣と、これまた聞きなれたタロスの雄叫びと、何かを殴る音が聞こえたかと思ったら。
    ドバシャーンっ!!!!!
    空から、黒い大きな物体が落ちてきた。
    「きゃーっ!!!」
    アルフィンは絶叫し、ジョウにより一層しがみ付く。
    「な、なんなんだっ!?」
    アルフィンを庇いながら、物体が落ちてきた方を凝視する。
    「あ。兄貴。アルフィン。」
    こんな状況だというのに、とぼけたリッキーの声。
    「な、なんなんだーっ!?」
    ジョウが叫ぶ。その叫びを聞き。
    「ジョウ?ジョウですかいっ!?アルフィンは?チビはそこに居ますか?無事ですかぃ?」
    生垣の向こうから、タロスの声が聞こえる。
    「あ、あぁ。タロスもこっちへ来いよ。状況を聞かせて・・・。」
    とにかく、状況整理をしないと。ジョウはそう思った。そこへ。
    「がぁーっ!?兄貴とアルフィン、裸っ!裸で抱き合ってるーっ!!!」
    と、やっと状況を理解したリッキーが叫ぶと同時に。
    「なっ、なんですとぉーっ!?」
    ・・・・・・・これまた、番茶の絶叫が。しかも、バシャバシャともの凄い勢いで湯を掻き分け、此方にやってくる。(こいつ、何時の間に来たんだ!?)
    「やーんっ!来ないでぇーっ!」
    アルフィンは、ジョウの腕の中から出るに出られない。恥ずかしさを通り越し、せめて、ジョウ以外の人目に付くまいと、身体をちぢ混ませている。ジョウから離れたい。身体を隠したい。でも、離れたら大変なことになる。ドツボである。(苦笑)
    「兄貴っ!これっ!!!」
    リッキーが、アルフィンが持ってきたのであろうバスタオルをジョウに投げる。(こういう時には機転の利くリッキー。)
    ジョウは素早くバスタオルを受け取り、アルフィンの身体に巻きつける。それと同時に。
    「アルフィンさーんっ!!!」
    デリカシーの欠片も。思慮・配慮もなーんにも無く、番茶が突進してきた。
    「きゃーっ!!!!!来ないでぇーっ!見ないでーっ!!!<大泣」
    アルフィンの願いと叫びも報われず。3人の周りには人垣が出来てしまった。
    不幸中の幸いは、温泉の水色が濃い乳白色であったコト。ジョウが巻きつけたバスタオルのお陰で上半身が、座り込んで抱き合っている2人の下半身は湯のおかげでまったく見えない。
    わらわらと集まって来たギャラリーは、リッキーとタロス以外、番茶率いる地元村人捜索隊の人々。
    「や〜。無事だったか?」
    「あんりまぁ〜。寒いから、温泉で暖を取っていただか?」
    「いんや〜。若いモンはえぇねぇ〜♪」
    「兄ぃちゃん、役得だねぇ〜♪」
    「姉ぇちゃん、肌が綺麗になったべ?ここのお湯は、美肌の湯として有名だかんな♪」
    「まぁ、無事にみっかったんだから、良かったべぇ〜?」
    『んだ♪んだ♪』(村人合唱)
    好き勝手に、言いたい事を言い捲くる地元村人捜索隊一同。(爆)
    ジョウ達はあっけに取られて、何も言えない。いや、言う事が出来ない。
    すると。
    「おーい。こっちに熊公がくたばってんぞぉ!?」
    遠くから、別村人が叫ぶ。
    「ちゃんとくたばってんのか?」
    「あぁ。白目剥いて、完全にくたばっとる。」
    「持って帰るべ。熊鍋にするだよ。」
    「思わん所で収穫があったのぉ〜。“棚から牡丹餅”か?」
    がっはっはっはっは。大笑いしながら、熊が倒れている方へ向かう人々。
    ・・・・・能天気な村人達である。どうしてそこで熊がくたばっているのかはまったく気にしていない。(いいのか、おい・・・。)
    「んじゃ、皆の衆。帰るべさ。」
    『あ〜、帰るべ。帰るべ。』
    『良かった、良かった。早よ〜見つかって、良かっただなぁ〜。』
    バシャバシャ。地元捜索隊の人々は言いたいコトを言い捲くり、とっとと熊を担いで帰っていった。(帰って良いのか!?)
    後に残されたのは、番茶のみ。
    「アルフィンさーん。良かった〜。無事だったんですねぇ〜!(滝涙)」
    どさくさに紛れて、アルフィンに抱きつこうとした番茶にパンチを食らわせ、バスタオルをアルフィンにきちんと撒き直したジョウは。
    「おい。こいつ(番茶)がこっちへ来ないように見張っとけ。用意が出来たら呼ぶ。それまで、絶対に来るな。」
    地の底から湧き出てきたような低―い声で、タロスとリッキーに言い渡す。
    『へ、へい。<あ、あいよっ。>』
    直立不動で答える2人。ちゃんと番茶は踏みつけてある。(おい?)
    バスタオルに包まれたアルフィンを前抱きにしたまま、ジョウは更衣室に向かった。
引用投稿 削除キー/
■753 / inTopicNo.27)  Re[26]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2004/09/18(Sat) 14:23:37)
    「ジ、ジョウ、もう良いから。」
    モジモジしながらアルフィンがジョウの胸元から声を上げる。
    そう。アルフィンはまだ、ジョウに前抱きにされたままだ。
    「更衣室までだ。このままで我慢しろ。」
    表情が伺えない、無感情な声がかえってくる。
    「え!?更衣室の中まで来るの?」
    困惑するアルフィン。
    「・・・ドコから覗いてるか分かりゃしねぇからな。」
    不機嫌をあらわにしたジョウの声。
    その後に“アルフィンの身体は誰にも見せねぇ。”と、小さく呟いたのはナイショである。(爆)もちろん、アルフィンには聞こえていない。
    「心配すんな。脱衣篭とタオルでバリゲート作ったら後ろ向いてるから。」
    “ん〜。そういう問題じゃないんだけど。。。”
    深い溜息を1つ吐くアルフィン。
    そうこうしている内に、女子更衣室に到着。アルフィンを下ろしたジョウは、自分のバスタオル(下はタオルで隠してます<笑)と、脱衣篭とを組み合わせ、ギリギリ1人入れる“簡易更衣室”を作った。
    「ほら、早く着替えろ。」
    そうアルフィンに促し、自分は後ろを向く。全神経をそこらじゅうに張り巡らせ、人の気配を伺っている。照れいる暇なぞない。(笑)
    「う、うん。。。」
    モゾモゾとジョウの作ってくれた“簡易更衣室”に、着替えと共に潜り込み、素早く着替える。
    「着替えたわよ。」
    と、ジョウに声を掛けると、
    「じゃぁ、タロスとリッキーのトコへ行っておけ。俺も着替えてすぐに行く。」
    後ろを向いたまま言うと、内側の出入り口から出て行った。
    もちろん、気が抜けた瞬間にアルフィンの肢体の柔らかさを思い出し、全身真っ赤になったのは言うまでも無い。(若さだよ、若さ。<核爆)

    タロスとリッキーの所へアルフィンが行くと。
    「あれ?兄貴は?」
    温泉につかったままのリッキーが聞いてきた。着替えが無いので、出るに出れないのだ。
    「ん。今、着替えてる。」
    はぁ。と1つ溜息を付く。
    「・・・腑が悪かったですな。」
    タロスが気の毒そうに言う。
    「まったく、その通りだぜ。」
    何時の間にか、ジョウが近付いてきながら答える。
    「あ、兄貴っ!」
    「まぁ、無事皆と会えたんですから、良し。。。って訳にも行きませんか。」
    憮然としているジョウ。溜息を付きまくるアルフィン。ずぶ濡れのリッキー。服がズタボロになっているタロス。
    まともな状態のメンバーは1人も居ない。(番茶は無視されている<笑)
    「おい。宿はここから遠いのか?」
    ジョウが聞く。
    「ん゛〜。もう早く戻りましょうよ。」
    うんざりしてアルフィンが続く。
    「いや、近いですぜ?目と鼻の先です。」
    思い出したようにタロスが答える。
    「おいらも戻って着替えたいよ。」
    ぶぇっくしょんっ!と盛大なクシャミを1つかますリッキー。
    「じゃ、戻りましょうぜ。おい、リッキー。お前はとっとと上がって、ダッシュで部屋へ戻れ。」
    「あーってるよっ!言われなくてもそうさせて貰うぜ。風邪引きたくねーもん。」
    「お前、“バカは風邪引かない。”ってコトワザ知らねぇのか?」
    「んっだとぉ〜っ!?」
    湯船から飛び上がり、タロスを睨むリッキー。
    調子が戻ったと単にコレである。
    「タロス!いい加減にしろっ!リッキーっ!本当に風邪引きたくなかったら、早く部屋へ戻れっ!」
    ジョウの雷が2人に落ちる。
    「「は、はいっ!」」
    2人同時に返事をし、リッキーは濡れたままダッシュして行く。
    「タロス。早く戻ろう。」
    はぁ。今度はジョウが盛大な溜息を付いた。
    「あ、あのぉ〜。もしかしなくても、私、忘れられています?」
    タロスの足元から、情けなーい声がする。
    「あ。忘れてた。」
    タロスは、番茶を踏みつけていた足をどける。先ほど踏みつける力を緩めたのだ。
    「や〜。声も出せないし、動こうとしても身動き出来なくて参りましたよ。」
    ・・・当たり前だ。動けないように踏みつけてたんだよ。
    ボソっ。と、タロスが呟く。
    「は?何か言われましたか?・・・ぶっ、ぶえっくしょんっ!!!」
    ザブンっ!
    番茶は起き上がったが早いか、盛大なクシャミをかまし、ブルルっ!と震えたが早いか、湯船に飛び込んだ。
    そういえばコイツ、湯船を掻き分けてやって来たんだよな。(爆)
    「あ〜♪良い湯加減ですなぁ〜♪」
    ・・・こういう状況下で、このセリフ。やはしズレている。(苦笑)
    「気持ち良いですよ〜♪皆さんもどうですかぁ〜?って、あれ???」
    番茶が落ち着いている間に、ジョウ達は既に姿をくらませていた。
    当たり前だ。これ以上コイツとなんぞ居たくねぇ。(大笑)
    「もぉ〜。折角の良いお湯なのに。勿体無いなぁ〜。」
    ・・・服のまま浸かって言うセリフか?しかも、お客ほたってて良いのか?
    「あ。風邪引いて、この先のお相手できなくなる方がマズイでしょ?このまましっかり温まってから、ホテルに帰りますよ♪」
    番茶。誰に向かって喋ってんだ???
引用投稿 削除キー/

<前の20件

トピック内ページ移動 / << 0 | 1 >>

このトピックに書きこむ

書庫には書き込み不可

Pass/

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

- Child Tree -