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忘れようったって、忘れられるわけがない。
彼女がすっと、動いたんだ。それはそれは優雅に。 結い上げて少し垂らした長い金髪が揺れて、ティアラに光が反射して眩しいくらいきらきらと輝いた、と思ったら。 次の瞬間。 美しい玉虫色のローブデコルテの長い裾から、モデルよりも美しい足がひらりと犯人の顔を蹴り上げた。 それから間髪を入れずに、白い長手袋の細い腕が犯人のみぞおちを殴る。「グー」で、だよ。
私は呆気にとられて、何も出来ずにその場をただ眺めていただけだった。
彼女の美しい顔は、髪一筋の乱れも無い。 倒れた犯人を、シンデレラみたいに華奢なハイヒールの右足で踏ん付けて、 ドレスの腰のリボンに仕込んであったレイガンをさっと取り出して顔に突きつける。
そして、彼女の耳のサファイアよりも蒼くて美しい瞳が、にやりと笑ってね。
「お生憎様でしたわね。私がSPよ」
って言うんだ。
みんな呆然と立っていたよ。 犯行が行われようとしていた恐怖なんかじゃなく、 目の前で起こった事の、余りの美しさに。
忘れられるわけがない。
あの凛とした声。 気高く美しく、そして強い。
プリンセス・アルフィン。
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