| こんこんっ! 突然のノックの音に,ジョウとアルフィンは電流が走ったかのような勢いで互いの身体を引き離した。 ジョウは慌ててベッドから降りる。 「アルフィンさん,入りますよ」 そう言ってドアを開けたのはクレアだった。 部屋の中にいるジョウを見つけて,クレアは細い眉をきりりとつり上げて叫んだ。 「あ,あなたは!さっきのっ!」 「やばっ!」 ジョウは明らかに逃げ腰である。 アルフィンには事の展開が全く読めない。そちらに気を取られたせいで,先程の気恥ずかしさはキレイに忘れている。 「じゃ,じゃあ,また明日来るから」 ジョウは慌ててアルフィンにそう告げると,そそくさと部屋を出て行こうとする。 どうも怒鳴る女性は苦手である。 むろん,普段のクレアはどちらかというと優しげな印象なのだが,ジョウは先程の”一喝を入れた”クレアしか知らない。 「え?うん,分かった。ありがとう」 アルフィンは呆気にとられたまま,反射的に答える。 ドアに手を掛けたジョウが,ふと動きを止めた。 軽く頭を捻ると,訝しげに牽制するクレアの横をすり抜け,再びアルフィンの前にやって来た。 「どうしたの?」 アルフィンがきょとんとして尋ねる。 ジョウは返事の代わりに素早く腰を屈めると,アルフィンの唇に一瞬のキスをした。 「じゃあな」 簡単にそう言うと,今度は真っ直ぐにドアを開けて出て行った。 「「えええええええええっ!?」」 ドアが閉まった瞬間にアルフィンとクレアの大合唱が聞こえてきた。
「なぁタロスぅ,俺ら達いつになったら休暇に入れるんだぁ?」 リッキーが工具をぶらぶらと弄びながら,作業中の大きな背中に呼び掛ける。 ジョウは単身依頼主の元へ事後報告に出掛けている。 「さぁな。アルフィンの退院が先か,<ミネルバ>の修理が完了するのが先かって感じだからなぁ。…少なくとも後1週間は足止めじゃねぇの?」 「ええぇぇぇー」 リッキーはへなへなとその場に座り込む。 仕事で約2ヶ月も退屈な航行を強いられてきたのに,まだ1週間以上も耐えなければならないのか。その現実はリッキーから見事に活力を奪った。 遊びたい盛りのオコサマにはチョットばかし可哀想かな,とタロスも少しは同情するが,それを口に出したりはしない。 「アルフィンの病院へ行って,ナースの姉ちゃん達に遊んでもらったらどうだ」 からかうように言う。 「げー,いやだよ。アルフィンの担当の姉ちゃん,おっかないモン。見つかると睨まれるんだぜっ」 リッキーは冗談じゃないとばかりに首をすくめる。 「まあ確かにそうだなぁ。…若いのに大した迫力だったなぁ」 くくくくくっとタロスが肩を揺らす。 当人の知らない所で散々な評価をされている事を,幸か不幸かクレアは知らない。今頃クシャミのひとつもしているかもしれないが。 「よーし,それじゃあ,あの姉ちゃんに見つからないようにアルフィンの見舞いに行くにはどうすりゃ良いか,作戦を立てながら病院に行くとするか」 タロスが時計を確認した後,工具を放り投げて言う。 ジョウもその足で病院に寄ると言っていた。 「え!?そんなら俺ら着替えてくるよ!」 リッキーは油にまみれた作業服のジッパーに手を掛けながら,慌てて走り出した。 「……けっ!色気づきやがって。まったくガキのくせによぉ」 そう毒づきながらもタロスの口元はにやりと笑っている。 「しゃーねーなぁ。俺もちったぁこざっぱりとしてくるかぁ?」 のんびりとひとりごちて,タロスも歩き出す。 タロスが生きてきた年月を思えば,1週間などあっと言う間だ。 クラッシャージョウのチームが全員そろって再び宇宙に飛び出すのは,もう間もなくである。
<Fin>
************************************************************************ こっから下はワタクシの独り言ですので…。 ムダに長いお話を最後まで読んで下さった貴方,お疲れ様でした。 そして,お付き合い頂き,本当にありがとうございました。 書き終えた今,なんだかとっても脱力でございます…。 お話を書くのがこんなに大変だとは,正直思いませんでした。 いやもうホントに『モノ書き』の皆様には頭があがりません。 書き上げるまでの途中途中の言い訳を上げたらキリがないのですが, ええもうたくさん反省しております…。 また絵描きに戻って,絵板で精進致します。はい。 お話もいずれまた…って懲りてないですね?すびばせん。 でも本当に,いつか幅も厚みもあるお話が書けたらいいですねぇ。 ああ,これはイラストでもそうなんですけどねぇ。 とにかく本当に『スミマセン』と『ありがとうございました』です。 では。
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