| 「そう言えばさぁ,なんでマーラはアイツが仲間だって,『D』だって分かったんだろう?」 宇宙港へ向かうホテルの専用リムジンの中で,リッキーが思い出したように尋ねる。 結局タロスを置き去りにした後で,ジョウ達と合流したのだ。アルフィンは呆れたが,ジョウは軽く笑っただけだった。 「俺ら達にはちっとも区別が付かないじゃんか」 うーんと腕組みをして首を捻る。 「さぁな。でも俺達と違って,外見だけしか見えない訳じゃないだろうからな。俺達には見えない互いの電波とか,何かそういうモノを感知するんじゃないか?」 ぼんやりと窓の外を眺めていたジョウが,振り向かずに答える。 「ふーん。そういうモンなのかなぁ…」 リッキーはまだうーんと唸っている。 「人間には区別が付かないのに,それでも区別するのは人間なのよね…」 アルフィンがぽつりと言う。 「うん。…なんか,おかしいよ」 リッキーは腕組みを解くと,そのまま両手を頭の後ろに回してシートにもたれた。 なんとなく重い沈黙が訪れる。 「ね,タロスはマーラに逢えたかしら?」 沈みがちな空気を払拭するように,アルフィンがトーンを上げて問いかける。 「結局,こっそり顔を見るだけで帰ってきたりしてな」 今度は振り向いて,ジョウがにやりと笑う。 「うひひ,あり得るなー。タロスってば見かけに寄らずシャイだもんなー」 リッキーもにやにやと顔を弛める。 「もうっ二人とも意地悪ねぇ!」 そう言いながら,アルフィンも笑っている。
来月のクリスマスイベントに向けて,そわそわと落ち着かない賑やかな街を抜け,リムジンは一路宇宙港へと加速していく。 ジョウ達の短くて長い小休暇が終わろうとしていた。
<FIN>
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