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Re[5]: Dreams come true
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□投稿者/ 舞妓 -(2006/06/17(Sat) 23:37:16)
| ■No1158に投稿(舞妓さんの小説)
ジミーの部屋は、ベッドの周りに大仰な医療機器が据え付けてある以外は、普通の10歳の少年の部屋だった。 TVヒーローのおもちゃ、ゲーム、ファンタジーの小説、漫画。 その中のいくつかを見て、ジョウは「おや」と思った。 ホーム・プラネタリウムだ。 自分が今いる惑星を設定し、スイッチを入れると部屋にその惑星の夜空が浮かび上がる。 「これは…」 ジョウには覚えがあった。 幼い頃、父ダンがこれを買ってきた。 ジョウはこれをとても気に入り、星々を眺めては宇宙に出る日を思い描いたものだ。 もしかして。 ジョウは、ジミーのおもちゃを目を皿のようにして見た。 するとところどころに。 かつて自分が夢中になったおもちゃが、確かにいくつかあるのだ。 プラネタリウム、宇宙船のラジコン、操船シュミレートゲーム。そして、モデルガン。紛れもなく、クラッシャー仕様の。 「…」 ジョウは確信した。 間違いなく、ダンだ。ジミーが知っている一回だけでなく、何回もダンはジミーにおもちゃを送っている。 「お兄ちゃんこれはねー、僕にダンお父さんが送ってくれたおもちゃだよ」 ジミーは嬉しそうに、それを見せた。 何の変哲も無い、飛行機模型だ。ただし、<アトラス>型の。 ジョウもこれを持っていた。ジョウが持っていたのは、きちんと<アトラス>そのままにペイントされて流星マークもDの飾り文字もついていた。 ジミーはそれを、とても大切にしていた。 もっと幼かった頃はたくさん遊んだであろうそれを、今はケースに入れて机の上に飾ってあった。 「僕ねえ、ネットで調べたんだ。これは、<アトラス>と同じ型だったよ。」 「…俺もこれを持ってたよ」 「本当?!」 ジミーの顔がぱあっと明るくなった。 「嬉しいよ!僕、<ミネルバ>のも欲しい。探したんだ。でも、この<アトラス>も非売品でさ、<ミネルバ>のも、ないんだ」 ジミーはアトラスを手に持って、ブーン、と言いながら走り回った。 「乗りたいなあ…僕も」 ジミーは走るのを止め、ふと窓の外を見上げた。 その横顔を、ジョウは見た。 哀しい、切ない、寂しい、そして、「生きたい」という痛いほどの思い。 「――――」 ジョウはすぐに決断した。 「乗りたいか」 「乗りたい!」 ジミーははっと振り向いた。 ジョウが何を言おうとしているのか、すぐに分かったのだ。 「じゃあ、行くぞ」 「うん!」 ジミーは慌てて着替え始めた。 ジョウは部屋を出ると、リビングで仕事をしているグラントに声をかけた。 「今から宇宙港に行きます。ジミーを<ミネルバ>に乗せてきます。ご同行願えますか」 「えっ…あ、はい!もちろんですよ」 「夜には家に戻るつもりですが、その間投薬は大丈夫ですか」 「ええ。」 グラントはバタバタと立ち上がり、あれこれと準備を始めた。その間にジミーは着替えを終えて出てきて、ジョウの背中に飛びついた。ジョウは笑ってジミーを肩車してやる。 グラントはそんな二人を後ろから見て、そっと目頭を押さえた。
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