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No1160 の記事


■1160 / )  Re[6]: Dreams come true
□投稿者/ 舞妓 -(2006/06/17(Sat) 23:38:48)
    No1159に投稿(舞妓さんの小説)

    「<ミネルバ>だーーーーー!!」
    ジミーは<ミネルバ>を見ると、大きな声で叫んだ。駐機スポットまで乗る電動カートが止まるか止まらないかのうちに飛び降りて、走って行く。
    ゆっくりと、ハッチが開いて、スロープが出てきた。
    赤いクラッシュジャケットが手を振っている。

    ハッチの側で、アルフィンとドンゴが出迎えた。
    「ジミー、グラントさん、これは俺のチームの航宙士、アルフィンです。こっちはドンゴ。あと二人はまだ休暇中」
    「はじめまして。ジミー、よろしくね。ミスタ・グラント、どうぞゆっくりしていらしてください」
    アルフィンがにっこり笑って言った。
    「お兄ちゃんの彼女?」
    「ジミー!」
    ジョウが真っ赤になって怒鳴った。
    アルフィンも頬を染めて、ジミーに言う。
    「違うわよ。…まだね」
    「そっかー。でもお兄ちゃんがアルフィンと結婚したら、アルフィンは僕のお姉ちゃんだね!ダンお父さんには、もう会ったの?」
    「え…?」
    な、なんですって?
    アルフィンは、笑顔を強張らせた。
    ジョウを見ると、隣のグラントと一緒に「あとで説明する」という顔をしている。
    「…あ、会ったことはあるわよ。でも、評議長としてね」
    「ふーん」
    ジミーはにやりと笑って、アルフィンの耳元で囁いた。
    「早くお父さんとして会えるといいね」
    アルフィンはくすりと笑った。
    「そうね」
    ジミーははしゃぎながら、船内へ入っていった。興味の対象は今度はドンゴに移ったようだ。
    ジミーとグラントの後ろを少し離れて歩きながら、アルフィンは小声で言った。
    「どういうことなの?」
    ジョウは本当に困った顔で、ため息と共に返事をする。
    「…ジミーが、親父の、隠し子らしい」
    「えーーーーっ!!!う…」
    思わず叫びそうになったアルフィンの口をジョウの手がおさえる。
    「あの子は、そうだと信じてるんだ。はっきりそうだと決まったわけじゃない」
    「で…どうしたらいいの」
    「そう振舞ってくれ、とグラントさんに言われた」
    「そう…。分かったわ」
    最低限のことだけ訊いて、アルフィンは呆然とした表情のまま、そう言った。

    アルフィンとドンゴにミネルバの案内を任せて、ジョウはとにかく自室にこもった。
    とりあえず、できる事をやる。
    とにかく情報収集だ。
    ジョウは部屋の端末から、静養先のホテルに電話をかけた。
    「兄貴。どうしたんだい」
    リッキーが出た。
    「タロスはいるか」
    「でくの坊なら、ドルロイの技師と腕の調整中だよ」
    「どのくらいで終る?」
    「もう終るんじゃないかな――――あ、来た。タロス、兄貴だぜ」
    タロスに代わった。
    「何でしょう」
    「お前、親父とタキに行ったことあるか」
    「ありますよ。おやっさんが引退するちょっと前でしたかねえ…」
    タロスは、記憶をたどる遠い目をした。
    「どういう仕事だった」
    「そうですなあ…確か、学校にテロリストが立てこもって、爆弾を撤去して…」
    間違いない。グラントの言ったとおりだ。
    「その時、親父が――――」
    ジョウはそこで、言葉に詰まった。
    学校の女性職員とナニゴトかを起こさなかったか、と。
    口に出せない。
    「おやっさんが?」
    「…タキで休暇を取らなかったか?」
    ジョウは当たり障りのない言い方をした。
    「さあてねえ…なにぶん10年以上昔のことなんで、よく覚えてないですよ。覚えてないってことは、別段変わったことはなかったってことだと思うんですがねえ」
    「そうか…」
    「何か、ありましたか」
    「…あった」
    「何でしょう」
    「それは…」
    言葉に、詰まる。
    「それは?」
    「親父が…」
    「おやっさんが?」
    「ジミーの…」
    「病気の少年ですね?」
    そのタロスの問いに頷いた時、「駄目よジミー!ジョウはお仕事してるの!」というアルフィンの大声と共にドアが開いて、ジミーが走りこんできた。
    「うわっ!」
    「おにーちゃーーーーん!」
    叫びながら、あっという間にジョウの膝に座る。ディスプレイの中のタロスを発見し、大きな声で「こんにちはー!!」と言った。
    タロスは一瞬あっけにとられたが、少年の大きな声の挨拶に相好を崩して、
    「よう。いい挨拶だ。」
    と言った。
    「僕ジミーっていうんだ。おじさんは?」
    「タロスだ。ミネルバのメインパイロットだ」
    「すっげーーー!かっこいい!」
    ジミーはジョウの膝の上でがたがたと身体を揺らして喜んだ。
    「タロス、あとでまた連絡する」
    「わかりやした」
    ジョウは慌てて通信を切った。
    「あーもう切っちゃった…話したかったなあ」
    ジミーは少しがっかりしていた。
    「じゃあ、ジミー、リビングにいきましょ。お菓子食べて、ちょっと休憩」
    アルフィンの申し出に、ジミーは飛び上がって喜んだ。
    「食べる!お兄ちゃん、いこう」
    ずるずるとジミーに引きずられる格好で、結局何の情報も得られないまま、ジョウはリビングに移動した。

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