| 今日は世間一般、宇宙全域でXmasイブ。 どんな人にも等しくXmasはやって来る。 やっては来るけれど、等しく楽しめるとは限らない。 で、楽しめない人たちがここにいる。 「ふう・・・」 アルフィンはコンソールに手をついて、顎を乗せるとメインウィンドウに映る星々を見た。 今年は悲しくなる程、どっぷりと仕事が入ってる。 年末年始と仕事が詰まっていて暫くは休暇はお預けだ。 まあ確かに、毎年Xmasに休暇が都合良く取れるわけじゃないから仕方ないのだけれど。 色々なことを考えながら、<ミネルバ>のブリッジでアルフィンは一人当直の任に就いていた。 護衛する船とはオートマチック操船で一定の距離を保っている。 何かあれば、ドンゴがすぐにレーダーで感知して危険を知らせるようになっているので、結局当直とは言っても何もすることがない。 とは言え、アルフィンはたまたま当直の任に就いたのではなかった。 狙って調整したのだ。Xmasイブの当直を。 本音を言えば仕事とはいえ、やっぱりXmasだから<ミネルバ>の中で出来るぐらいの簡単なパーティをしたかったが、護衛の任務中なのでクライアントが急遽予定変更なんて言い出したら、せっかくの料理が台無しになる。 だから、その線は諦めた。手作りのXmasケーキも当然ながら無理。 後はXmasプレゼントをするぐらいしかアルフィンは思いつかなかったが、ただ「はい」と渡したのではおもしろくない。 やっぱりXmasはサンタさんがプレゼントを持ってくるのが一番いい。 だが、一体誰がそれに気が付いてサンタ役をする。 まずいない、うちのメンバーは。 そんなことに気が回る奴らじゃない。 そのため、アルフィンは自分でサンタ役をすることにした。 こっそりこっそり準備したXmasプレゼント作戦を今夜決行することにした。 いや、今夜決行しなければ意味がない。 時間も標準時で二十三時三十分を過ぎたところだ。 次の交代は早朝三時だからまだ時間は充分あった。 「ドンゴ、そろそろお願いね」 アルフィンは、オートパイロットのいつもはジョウが座る副操縦シートから後ろの空間立体表示シートに居るドンゴに声を掛けた。 唯一の共犯者ドンゴを巻き込んで、作戦は開始されようとしていた。 「キャハ、了解!!当直交代、当直交代、キャハハ」 ランプを点滅させて、ドンゴが答えた。 「なるべく早く帰って来るからね」 「オ願イシマスヨ、あるふぃん」 「はい、はい。分かってますってば、準備OK!シュミレートもバッチリなんだから」 そう言って、アルフィンは笑顔で<ミネルバ>のブリッジを後にした。 エレベーターを降り、自室に戻って赤のクラッシュジャケットをベッドの上に脱ぎ捨てると、素早く用意したサンタ衣装に着替える。 首の素肌に当たるふわふわの白いファーが少しくすぐったい。 男性が着るようなサンタクロースの衣装ではなく、両肩が大きく開いたビロード地のミニスカートのサンタ衣装だ。 クルリと回ればスカートの裾がふわりと浮き、妖精がダンスを踊っているようにも見えた。 帽子に、手袋、ブーツを履いて即席サンタガールが出来上がった。 鏡で全身をチェックして、白い袋にジョウ・タロス・リッキーが欲しがっていたプレゼントを入れ早々に自室を出た。
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