| 360度、見渡す限りの青い海に浮かぶ白い豪華クルーザー。ほぼ真上にきた太陽は、小さいながらも設備が整った船の甲板に容赦なく照りつける。白いタオルをほっかむりした、この船には不釣合いな二人が、大小二つの背中を丸めて波ひとつたたない海面に糸を垂れていた。
「よお、タロス先生。いつになったら釣れるんだよ」 「そんな簡単に釣れちゃあ、面白くも何ともねえだろ」 「バースデイプレゼントはブラックマーリンの刺身だとかなんとか大見得切っちゃってさ。ボウズで帰ったらアルフィンに何言われるかわかんないぜ。あたしのバースデイプレゼントなのに、釣れなかったのね!!なんてさ」 「・・・・・」 「ああ、クソあちぃなあ」 「・・・・・」 「兄貴たち、今頃ビーチでのんびり、冷たいもんでも飲んでるんだろうなあ」 「文句言うなら泳いで帰れ」 「ブラックマーリンが釣れたら、そいつにつかまって泳いで帰るよ」 「フン」
あまりの暑さに、それ以上言い争いする元気もない様子の二人。
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