| 惑星アラミスの海岸ハイウェイに、1台のエアカーがハイスピードで疾駆していた。 ジョウとアルフィンを乗せたエアカーだ。
今回は後味の悪い事件だった。 飛び込みの仕事を受けたばかりに罠にはめられ、海賊行為の容疑をかけられたジョウ達。 汚名を晴らすため、マーフィ・パイレーツと一戦を交え勝利を手にしたが、マチュアの死と父親への疑惑が、ジョウの心にわだかまりを残していた。 だが、そんな彼の心を溶かしたのはアルフィンだった。 彼女の話を聞くうちに、ジョウは本来の自分を取り戻すことができた。 今、ジョウの横には、無邪気に笑うアルフィンがいる。 「とばして、ジョウ!」 「よし!」 ジョウがアクセルをぐいっと踏み込むと、心地よい潮風がふたりを包み込んでいった。
しばらくドライブを楽しんでいると、アルフィンがジョウの顔を覗き込んだ。 「ねえ、ジョウ。ちょっと休憩しない?私、喉渇いちゃった」 「そうだな。近くに臨海公園があるから、そこで休憩しよう」 「うん!」 ジョウ達はハイウェイを降り、臨海公園へと続く道にエアカーを走らせ、公園のパーキングエリアに駐車した。エアカーから降りたアルフィンは、大きく伸びをする。 「うーん、風が気持ちいい。あ、あそこにスタンド見っけ。私はジンジャエールでいいから」 「何だよ。俺に買って来いって言ってるのか?」 「あら?そう聞こえた?じゃ、そうなんじゃない。私はあっちのベンチで待ってるから。 あ、そうそう、ノンカロリーのにしてよ〜」 ジョウにそう言い残すと、アルフィンはスタスタとベンチに向かって歩き出した。 「まったくー」 ジョウは、いつものアルフィンらしい態度に苦笑しながらも、彼女のご希望であるノンカロリーのジンジャエールを買いにスタンドへと向かった。
両手にコップを抱え、ジョウはアルフィンが座るベンチにやって来た。 「ほれ」 「サンキュー」 ジンジャエールの入ったコップを受け取ったアルフィンは、相当喉が渇いていたのだろうか、凄い勢いでゴクゴクと喉に放り込み、プハーっと大きな声を上げた。 「おい。ビールじゃないんだぞ」 「えへっ」 舌を出して笑うアルフィン。 彼女のたあいない仕草に、ジョウの胸が高鳴った。 そんなジョウの様子など一向に気づかないアルフィンは、海を見つめながら体にまとわりつく心地良い潮風を堪能していた。 どこからか、笑い声が聞こえてくる。 聞こえてくる方向に顔を向けると、子供たちが楽しそうに砂浜でビーチボールをしていた。 「楽しそうね」 「そうだな」 「ジョウも楽しい?」 不意にアルフィンが真顔でジョウに尋ねた。 「ん?何でそんなこと訊くんだ?」 ジョウは怪訝な顔つきで、アルフィンに目をやった。 「別に理由はないけど・・・ただ訊いてみたかっただけよ」 アルフィンはコップに視線を落とした。 彼女は今回の事件で、ジョウの心が深く傷つき悲哀していることを知っていた。 父親への疑惑も然る事ながら、一番彼を悲哀させたのが、マチュアの死である事を・・・ 「楽しくなかったら、こんな所に来てないさ」 「え?」 アルフィンがジョウに視線を戻すと、彼は、はにかむように笑っていた。 (本当?本当にそう思ってくれてるの?) その笑顔を見たアルフィンは、溢れてくるジョウへの気持ちを満面な笑みに込めた。 「そっか、よかった」 (ジョウの心の中には、私だけが居たい・・・いつか、そうなりたい) 言葉に出せない彼への思いを胸に秘めたまま、アルフィンはジョウを見つめていた。
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