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■54 / inTopicNo.1)  タンデム・シート
  
□投稿者/ るー -(2002/03/16(Sat) 13:31:40)
    俺達は2週間の休暇に入っていた。
    たて込んでいた仕事を片付け、久しぶりに取れたまとまった休みだ。
    保養地に選んだのは、開発されたばかりのリゾート惑星・サナトラ。
    施設の数などは有名所に遠く及ばないが、人ごみを避け、のんびりしたい俺達には
    もってこいのリゾート地だ。
    この、砂浜と海しかないと言っても過言ではないリゾート地で
    もう一週間が過ぎようとしていた。
    今日は午前中、リッキーの提案でダイビングを楽しみ、
    昼食をとった後は、タロスの提案でビーチで昼寝と決め込んだ。
    ビーチに照りつける太陽(ここではサナトラの母星だが)は強烈だし、
    気温も30度と高いのだが、湿度が低い為、木陰に入ればとても過ごしやすい。
    昼寝には絶好の環境だ。
    このビーチにも有余るほどの木陰が用意されている。
    俺達はそれぞれ好き勝手に気に入りの場所をみつけ、
    レンタルのビーチベッドをリクライニングさせた。

    「アタシはこ〜こ♪」
    アルフィンが当然のように俺の横に陣取る。
    それを見たリッキーがニヤニヤと遠慮の無い視線を俺達に送った。
    それに気付いたアルフィンがすーっと目を細めてリッキーに絡む。
    「あによ!言いたいことがあるんなら言いなさいよ〜〜」
    「何でも無〜いよ!おやすみ〜!」
    リッキーはそそくさとベッドに横になった。
    「あ!こら、リッキー!」
    攻撃対象があっけなく身を引いてしまったので、アルフィンは憮然としたままだ。
    「はん!アタシがどこで寝ようがアタシの勝手だわ。ねえ、じょ〜お〜?」
    そういうことを俺にふらんで欲しい・・・
    俺は「はぁ」と小さくため息をつくと、リッキーに習いさっさとビーチベッドに
    横になり、目をつぶった。
    「ああ〜ん。ジョウ・・・」
    後に放っておかれたアルフィンは、ますます憮然となったようだが
    やがて諦めたように横になった。
    なんだかんだあったが、俺はすぐに深い眠りの底に落ちていったのだった。

    どれくらいそうしていただろう。
    「・・・ジョウ。・・・ジョウ。」
    アルフィンが俺の名前を呼んでいる。
    その声は高く低く、大きく小さく、夢とも現実ともつかない俺の意識の狭間で
    くるくると奇妙に響いていた。
    俺はふいに目を開けた。
    「あ・・・?」
    「ジョウ。目ぇ覚めた?」
    目の前にアルフィンの顔があった。
    「!!!」
    「?」
    「うわぁ。」
    「??何情けない声だしてんのよ?」
    アルフィンが呆れたような表情を浮かべる。
    俺はちょっとむくれた。
    「いきなし、おどかすなよ・・・あせるだろ」
    「ま!失礼ね。」
    アルフィンは、プッとふくれた。
    「この顔のどこにあせる要素があるのよ」
    「・・・いや、そういう問題じゃなくて。」
    「じゃあ、なによぉ」
    「いきなり目の前に顔がありゃ、誰だってあせるだろぉが!」
    「あら。そう?」
    「・・・・・・・」
    不毛な会話にため息が出る。
    俺達は漫才コンビか。
    しかし、妙な掛け合いのおかげで頭がすっきりしてきた。
    良く見るとアルフィンはさっきまでのビキニ姿ではない。
    微妙に異なる色んなブルーでストライプ模様を表した短めチューブトップと
    白いデニム地の襟付きのベスト、それにヒップハンガーのブルーデニムという
    出で立ちだ。
    「アルフィン着替えたのか?」
    「うん、目が覚めちゃったんだもん。」
    シャワーも浴びてきたらしい。
    彼女をとりまく甘いシトラスの香りが俺の鼻腔をくすぐる。
    アルフィンの顔にかかった金髪に思わず手を伸ばし、軽く手にとった。
    さらさら、つるつるとした触り心地を少し楽しむ。
    そのまま肩の後ろに流してやった。
    「タロスとリッキーは?」
    「まだ、お休み中。」
    アルフィンは数メートル向こうを指差す。
    なるほど。確かに二人は仲良く爆睡中だった。
    「俺、どれくらい寝てた?」
    「んーとね。2時間くらいかしら。」
    「2時間かぁ。もうちょっと寝ていたかったな・・・。」
    恨めしそうにアルフィンを見上げる俺。
    そんな俺の顔を見て、急にすまなそうな顔になるアルフィン。
    「・・・気持ち良さそうで起こすのが可哀想かな〜とは
    思ったんだけどぉ・・・。」
    「・・・だけど?」
    「アタシ一人じゃ退屈なんだもん。ね!どっか行こ!」
    急にはちきれんばかりの笑顔で俺に迫る。
    「車借りてさぁ。ね?ね?ね?」
    「・・・どこ行きたいんだ。」
    俺にはだいたいの予想はついていたが、一応尋ねてみた。
    「か・い・も・の♪」
    やっぱり・・・
    俺はがくっと頭を垂れた。

    だいたい、アルフィンの買い物は毎度毎度恐ろしいほどの時間がかかる。
    この間も、リュックが欲しいというので仕方なく付き合ったのだが、
    デザインから始まり、大きさ、色、マチの幅、収納力・・・
    あとは何だったか忘れた。
    とにかく数えあげればキリが無いほどのこだわり振りだった。
    何軒の店を覗いたのかも覚えていない。
    結局オーダーメイドの店を見つけて、やっとアルフィンの足は止まったんだ。
    しかし、そこでもエライ待たされた。
    そういえば今アルフィンが背負っているのは、かのリュックじゃないか。
    俺の頭にあのつらい経験がむざむざと蘇る。
    アルフィンの碧い瞳が、俺の濃いアンバーの瞳を捕らえる。
    俺は瞳に吸い寄せられるように上体を起こした。
    「・・・しょうがないな。」
    「うふふ♪」
    どうせ、もう目が覚めてしまったのだ。
    アルフィンは昼寝の続きをさせてくれそうもないし、俺には選択の余地はない。
    彼女はうれしそうに微笑んでいる。
    いつの間にか彼女のペースにはまっている自分に気付いた。
    ちょっとばかりシャクだが、それが不思議と不愉快ではなかった。
    「着替えにもどるか」
    「うん!」
    アルフィンが立ち上がった俺の腕をとる。
    午後の心地よい風が俺達の頬をなぶり、その風に促されるように
    俺達はビーチをあとにした。





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■55 / inTopicNo.2)  Re[1]: タンデム・シート
□投稿者/ るー -(2002/03/16(Sat) 15:27:54)
    ビーチとホテルは目と鼻の先だ。歩いても5分と掛からない。
    ホテルに着くとロビーにアルフィンを残し、一人で自室に戻った。
    軽くシャワーを浴び、急いでTシャツと黒いストレートデニムを身につける。
    ごつい印象のスポーティサンダルをつっかけ、再びロビーに向かった。
    エレベーターから降りると、アルフィンがすぐに駆け寄ってきた。
    「待たせたな。」
    「ううん。平気。」
    彼女は長い金髪を掻き揚げ微笑んだ。
    そんな他愛の無い仕種にどきっとしながらも、俺は平静を装ってフロントへと歩き出した。
    すぐにアルフィンが俺の腕に自分の腕をからませてきた。
    俺は空いた左手でくしゃっと自分の髪を一撫でした。

    フロントでは、チェックインをする家族連れやグループの列のせいで多少待たされた。
    俺達の番がきた。
    「エアカーを借りたいんだが」
    「かしこまりました。どのようなタイプかご希望はおありですか?」
    実直そうなフロントマンが丁寧な物腰で応対する。
    「カップルの方々に人気のバイクタイプもご用意できますよ。」
    俺とアルフィンの様子を察して、気を利かせたつもりなのだろうか。
    「いや、俺達は・・・」
    「ジョウ!」
    俺の言葉を遮り、アルフィンが俺の名を口にする。
    視線をアルフィンに向けた。
    「アタシ、そのバイクのに乗ってみたい。」
    「はあ?買い物に行くんだろ。荷物はどうするんだよ。バイクじゃむりだぜ。」
    「あら、お店からホテルに送ってもらうわよ。リュックだってあるし。」
    と、背負っている小ぶりなリュックを指差す。
    「・・・・・・」
    あからさまに呆れた顔をしてしまった。
    俺のそんな表情をみて、アルフィンの顔がとまどうように歪む。
    「ダメ?かな・・・」
    俺達のそんなやりとりの間を見計らって、フロントマンが伺いを立ててきた。
    「どうなさいますか?」
    俺は少し考えたあと、
    「ああ。そのバイクタイプの。そいつを借りる。」
    アルフィンがびっくりした様子で俺を見上げる。
    しかし、その表情はうれしそうだ。
    俺は彼女に少し笑ってみせた。
    「かしこまりました。それでは、正面の方にご用意させて頂きますので、少々
    お待ち下さいませ。」
    「ああ。よろしく頼む。」
    「それから、こちらはヘルメットです。」
    フロントマンは、カウンターの片隅からお揃いのヘルメットを取り出し、
    俺達に手渡した。
    「車体にはセキュリティシステムが何重にもセットされてはおりますが、
    決まりとなっておりますので必ず着用してください。」
    「わかった。」
    「そちらには通信機能もついておりますので、お二人でお話も出来ますよ。」
    フロントマンは相好を崩さず説明を続けた。
    俺はぎこちない笑顔を返すことしか出来なかった・・・。

    フロントマンには、もうひとつ、ビーチに残してきたタロスとリッキーへ外出する旨の
    伝言を頼み、俺達はフロントを後にした。
    「気をつけていってらっしゃいませ。」
    フロントマンは頭を下げ、俺達を見送った。
    ホテルの玄関に移動する。
    程なく、赤を基調としたデザインのスポーツタイプのエアバイクが俺達の前に
    滑り込んできた。
    ボーイからキーを受け取ると、ヘルメットをかぶり早速シートにまたがった。
    軽くエンジンをふかしてみる。
    後方噴射ノズルから小気味良いエアが噴出する。
    いつでも発進できる状態だった。
    ふとアルフィンを見ると、彼女はヘルメットもかぶらずにバイクから少し距離を置いて
    立ち尽くしていた。
    「何やってんだ。乗らないのか?」
    ヘルメットのバイザーを上げ、アルフィンに声をかける。
    「何か緊張しちゃって・・・。」
    初めての経験に気後れしているのだろうか。
    俺はちょっと笑いを漏らし、彼女を促した。
    「大丈夫。俺にしがみついてろ。」
    「う、うん。」
    アルフィンはヘルメットをかぶると、恐る恐るシートに腰をおろした。
    俺の腰に遠慮がちに手を回してくる。
    「もっと、しっかり掴まってないと落ちるぞ。」
    「お、おっけー。」
    今度はぎゅっと抱きしめられた。
    アルフィンの体の柔らかさが、服を通してもリアルに背中に感じられる。
    俺は少しどぎまぎしながら、バイクをスタートさせた。
    すぐにビーチ沿いの道に出た。
    ぐんぐんスピードが上がっていく。
    「ねえ、ちょっとぉ」
    アルフィンがふいに話しかけてきた。ヘルメットのスピーカーから声が聞こえる。
    「スピード速くない?」
    俺はコンソールの速度表示に目をやった。
    「まだ、150そこそこだぜ」
    「うっそ〜。」
    バイクの体感スピードは、乗りなれたエアカーのそれを軽く上回るらしい。
    俺はちょっと意地悪くアルフィンに聞いた。
    「怖いのか?」
    「・・・怖くなんかないわよ!」
    「ほぉ・・・」
    さらにスピードを上げる。
    「しっかり掴まってろよ。」
    「ウ・・・ン」
    爽快だった。まるで風になっているようだった。
    俺がそんな高揚感を感じていると、不意にアルフィンが呟いた。
    「ジョウの背中気持ち良いね・・・大好き。」
    小さい声だったがしっかり聞こえてしまった。
    困惑して、スロットルレバーを握る手が緩んだ。スピードがかくんと落ちる。
    心臓が高鳴るのが自分でもわかった。
    くそ!俺の心臓め。運転に集中できないじゃないか。
    前方にパーキングエリアが見えた。
    休憩したり、景色を楽しんだり、多目的に造られた場所だ。人影はほとんど無い。
    俺はスピードを落としパーキングエリアに入った。
    奥の一角に駐車した。

    エンジンを止めると、ヘルメットをとってハンドル部分にかけた。
    窮屈な空間から開放された髪の毛が潮風にさらされる。
    アルフィンはバイクが停まるのと同時にシートから降り、海の方に歩を進めて行く。
    ヘルメットをとって、堤防の低い塀の上に置いた。
    俺もバイクのシートを降り、そのままバイクの傍らに立った。
    アルフィンが口を開く。俺に背を向けたままだ。
    「どうしたの?急に」
    それはこっちのセリフだ、と思ったが口に出さずに
    「いや。別にどうってことじゃないけど・・・」
    と、口篭もった。
    彼女がこちらを振り向いた。
    と、ヘルメットに圧迫されて前髪があらぬ方向に癖付いているのに気付いてしまった。
    それを見て思わず吹き出す俺。
    「ぷっ」
    「え?何?」
    アルフィンがいぶかしむ。
    「アルフィン、前髪・・・くくっ」
    あわててリュックから手鏡を取り出すと、呆然となった。
    「アタシの前髪〜・・・」
    忍び笑いをもらす俺を轟然と睨みつける。
    「もう!そんなに笑う事無いじゃない!」
    アルフィンは赤い顔でつかみ掛かってきた。
    「おっと」
    俺は思わず前に突き出されたアルフィンの腕をとった。
    腕はそのまま横に広がる。
    勢いあまったアルフィンの頭が俺の顎の下に急接近した。
    アルフィンが顔を上げた。
    お互いの顔が近くにあった。
    目が合う。
    俺の心臓がはねた。
    自分でもわからないうちにアルフィンを抱きしめていた。
    アルフィンの腕も、俺が彼女の体に腕を回すのと同時に、俺の背中に回っていた。
    俺は体を離すと、そっと彼女の唇にキスをした。
    最初は唇が触れるだけだったが、徐々に甘くて深いキスになった。
    アルフィンが、ふぅとかすかに吐息をつく。
    それが合図になったように俺達の体は離れた。

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■56 / inTopicNo.3)  なんだかな〜・・・
□投稿者/ るー -(2002/03/16(Sat) 15:35:07)
    すいませーん。まだ、もうちょっとあります。
    もう、ほとんどエンディングなのに、変なところで切っちゃいました・・・
    ペース配分考えずに最初から飛ばしすぎ・・・あーあ。

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■57 / inTopicNo.4)  Re[3]: タンデム・シート
□投稿者/ るー -(2002/03/16(Sat) 16:04:48)
    体を離したら、急に気恥ずかしさがこみ上げてきた。
    アルフィンも又俺に背中を向けてしまった。
    なぜだか急に一人取り残された気分になった。
    そんな風に考えたら、もう、いてもたってもいられなくなった。
    手を伸ばし、アルフィンの背中を求めた。
    後から抱きすくめる。
    アルフィンは驚いて一瞬身を固くさせたが、すぐに力を抜いた。
    そして、自分の肩のあたりに回された俺の腕にそっと手を置いた。
    「・・・・・・・」
    「・・・・・・・」
    海から聞こえてくる波音と、ときおり吹きつける波の音だけが俺達を包んでいた。
    ただ、それだけだった。
    アルフィンの手の暖かさがうれしかった。
    「・・・アルフィン。」
    俺は一言だけ、彼女の名前を呼んだ。
    自分の腕の中の彼女を確認するかのように。
    俺に抱きしめられながら、アルフィンははかすかにうなずいたみたいだった。

    前髪の乱れもあって、アルフィンの買い物はキャンセルになった。
    「やっぱり、エアカーにすればよかったかしら・・・」
    自分の前髪をつまみながら、恨みがましく呟いた。
    「俺はどっちでもいいぜ。でも、今回の言い出しっぺはアルフィンだからな。」
    「・・・いじわる」
    俺はアハハと声に出して笑った。
    アルフィンも俺につられて笑った。
    ひとしきり笑いあったあと、アルフィンは俺の目を覗きこむようにして言った。
    「今度は、カチューシャかヘアバンド用意しとくわ」
    「・・・そうだな。」
    たまには二人でバイクもいい。
    魔法じみた感覚を思いだしながら、俺は空を振り仰いだ。
    どこまでも続く青い空が俺達に上に広がっていた。

                                 〈END〉
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