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■586 / inTopicNo.1)  それいけサンタガール♪
  
□投稿者/ 璃鈴 -(2003/12/24(Wed) 22:00:41)
    今日は世間一般、宇宙全域でXmasイブ。
    どんな人にも等しくXmasはやって来る。
    やっては来るけれど、等しく楽しめるとは限らない。
    で、楽しめない人たちがここにいる。
    「ふう・・・」
    アルフィンはコンソールに手をついて、顎を乗せるとメインウィンドウに映る星々を見た。
    今年は悲しくなる程、どっぷりと仕事が入ってる。
    年末年始と仕事が詰まっていて暫くは休暇はお預けだ。
    まあ確かに、毎年Xmasに休暇が都合良く取れるわけじゃないから仕方ないのだけれど。
    色々なことを考えながら、<ミネルバ>のブリッジでアルフィンは一人当直の任に就いていた。
    護衛する船とはオートマチック操船で一定の距離を保っている。
    何かあれば、ドンゴがすぐにレーダーで感知して危険を知らせるようになっているので、結局当直とは言っても何もすることがない。
    とは言え、アルフィンはたまたま当直の任に就いたのではなかった。
    狙って調整したのだ。Xmasイブの当直を。
    本音を言えば仕事とはいえ、やっぱりXmasだから<ミネルバ>の中で出来るぐらいの簡単なパーティをしたかったが、護衛の任務中なのでクライアントが急遽予定変更なんて言い出したら、せっかくの料理が台無しになる。
    だから、その線は諦めた。手作りのXmasケーキも当然ながら無理。
    後はXmasプレゼントをするぐらいしかアルフィンは思いつかなかったが、ただ「はい」と渡したのではおもしろくない。
    やっぱりXmasはサンタさんがプレゼントを持ってくるのが一番いい。
    だが、一体誰がそれに気が付いてサンタ役をする。
    まずいない、うちのメンバーは。
    そんなことに気が回る奴らじゃない。
    そのため、アルフィンは自分でサンタ役をすることにした。
    こっそりこっそり準備したXmasプレゼント作戦を今夜決行することにした。
    いや、今夜決行しなければ意味がない。
    時間も標準時で二十三時三十分を過ぎたところだ。
    次の交代は早朝三時だからまだ時間は充分あった。
    「ドンゴ、そろそろお願いね」
    アルフィンは、オートパイロットのいつもはジョウが座る副操縦シートから後ろの空間立体表示シートに居るドンゴに声を掛けた。
    唯一の共犯者ドンゴを巻き込んで、作戦は開始されようとしていた。
    「キャハ、了解!!当直交代、当直交代、キャハハ」
    ランプを点滅させて、ドンゴが答えた。
    「なるべく早く帰って来るからね」
    「オ願イシマスヨ、あるふぃん」
    「はい、はい。分かってますってば、準備OK!シュミレートもバッチリなんだから」
    そう言って、アルフィンは笑顔で<ミネルバ>のブリッジを後にした。
    エレベーターを降り、自室に戻って赤のクラッシュジャケットをベッドの上に脱ぎ捨てると、素早く用意したサンタ衣装に着替える。
    首の素肌に当たるふわふわの白いファーが少しくすぐったい。
    男性が着るようなサンタクロースの衣装ではなく、両肩が大きく開いたビロード地のミニスカートのサンタ衣装だ。
    クルリと回ればスカートの裾がふわりと浮き、妖精がダンスを踊っているようにも見えた。
    帽子に、手袋、ブーツを履いて即席サンタガールが出来上がった。
    鏡で全身をチェックして、白い袋にジョウ・タロス・リッキーが欲しがっていたプレゼントを入れ早々に自室を出た。
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■587 / inTopicNo.2)  Re[1]: それいけサンタガール♪
□投稿者/ 璃鈴 -(2003/12/24(Wed) 22:00:47)
    一番最初は、隣のリッキーの部屋。
    鍵は掛かっていない。今夜だけはドンゴに鍵を外しておくように伝えてある。
    アルフィンがリッキーの部屋のドアの前に立った。
    スイッチを押すと音もなくドアが開く。
    電気は消しているが、ベッドサイドのランプが小さく灯っているので周囲の様子は充分分かる。
    ガチャガチャとして、あちらこちらに服や物が散らばっていた。
    相変わらず自分の趣味に走っている部屋は、ハードロック系の音楽関係のミュージシャンのポスターが、壁にペタペタと貼ってある。
    当のリッキーは熟睡しているのか、部屋の左奥のベッドの上で仰向けで右足をブランケットから出して眠っていた。
    アルフィンは、袋から欲しがっていたとあるミュージシャンのCDを取り出し、そっと枕元に置いた。
    いつもはやんちゃな弟としか見ていなかったが、こうしてみればそれなりにリッキーも男らしくなった。
    ――― ジョウにはまだまだだけどね
    ついいつもの癖でリッキーのおでこにデコピンしようとしたが、慌てて止めた。
    今、リッキーを起こしたら騒ぎになって苦労が水の泡になる。
    アルフィンはリッキーの顔を見てクスリと笑った。
    「MerryXmas、リッキー☆ また買い物付き合ってね」
    小声でそれだけ言うとアルフィンは、ブランケットを掛け直してリッキーの部屋を後にした。

    次は、タロスの部屋。
    ジョウとタロスはもしかしたら起きているかもしれないと思い、夕食時に出したコーヒーにほんの少〜しだけ睡眠薬を入れた。
    あの後、すぐに寝たはずなので二人とも心地よい睡眠中のはず・・・。
    少し緊張しながら、スイッチを押してタロスの部屋のドアを開けた。
    間接照明の灯りがほんのりと部屋を照らす。
    毎度ながら、タロスの部屋は巨人の国に迷い込んだような感覚に陥る。
    何もかもスケールがでかい。
    ベッドもそうだが、ソファにしても一人用のはずなのに、アルフィンが座れば充分ベッドで使えた。
    タロスは部屋の中央にある特注の大きなベッドで意外にも?行儀良くブランケットに包まれて眠っていた。
    タロスが欲しがっていた物、年代物のブランデー。
    琥珀色の液体が、洒落た硝子のボトルの中で揺れる。
    そーっと気づかれないように枕元に置くと、タロスの寝顔を見て微笑んだ。
    いつもは怖そうな顔つきだが、タロスはとても優しい顔で眠っていた。
    幸せな夢でも見ているのだろうか?
    「MerryXmas、タロス☆、いつもありがとうね」
    そう呟いて、白い袋を持ってサンタガールは巨人の国を後にした。

    最後に残ったジョウの部屋。
    心臓の鼓動が少しだけ上がってドキドキが増してくる。
    ここが一番緊張する。他の二人と違ってジョウの寝顔を想像するだけで顔が紅くなる。
    といってここで長くも居られないので、意を決してジョウの部屋に入った。
    灯りはリッキーと同じくベッドサイドのランプだけ。
    相変わらず無駄な物がない。シンプルな部屋だ。
    時々仕事でデスクの上が書類まみれになることがあったが、普段は殺風景なほど何もない。
    ベッドにはジョウがブランケットにくるまって心地よく眠っていた。
    身体をこちら側に丸めて規則正しい寝息を立てていた。
    寝る前にシャンプーをしたのか、洗い立ての髪からいい香りがした。
    思ったより長い睫が伏せられた瞳は、優しいアンバーだが今は見えない。
    ゆっくりと白い袋からプレゼントを取り出し、アルフィンはもう一度プレゼントを見つめた。
    悩みに悩んで選んだのは、黒のダウンジャケット。
    最近の休暇は、夏のリゾートばかりに出かけていたので、たまには冬のリゾートに行こうと切り出した時、欲しがっていた物だった。
    色もデザインもあれこれ考えて決めたものだから、是非ジョウに気に入って欲しかった。
    ともあれ、プレゼントを枕元に置こうとして思ったより嵩が張ったので、箱の角がジョウの頭を掠めた。
    「う、うん・・・」
    ジョウの声に、アルフィンは慌ててベッドから離れた。
    起きるのかと思ったが、ジョウはそのまま寝てしまった。
    アルフィンは恐る恐るジョウに近づいた。
    屈んで顔を見つめた。やっぱりまだ寝ているらしい。
    少し安心して、アルフィンは胸を撫で下ろした。
    いつまでも寝顔を見ていたかったがそうもいかない。
    本当なら当直中なのだから。
    「MerryXmas、ジョウ☆、愛してるわ♪来年は二人で過ごしたいからお願いね」
    小声でそう言いながら顔が緩む。愛しくて堪らない。
    この男性を好きになってよかったと心からそう思った。
    ―――あたしもプレゼント貰おうっと。
    アルフィンは自分の右の人差し指に軽くキスをすると、そっとジョウの唇にその指を当てた。
    そして、その指をもう一度自分の唇に当てた。
    当たった場所から、少しだけ熱を帯びてくるのが分かる。
    アルフィンは幸せな気分でジョウの部屋を後にした。
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■588 / inTopicNo.3)  Re[2]: それいけサンタガール♪
□投稿者/ 璃鈴 -(2003/12/24(Wed) 22:01:06)
    自室に戻り、サンタ衣装からいつもの赤のクラッシュジャケットに着替えて、アルフィンは慌ててブリッジに戻った。
    「ごめん、ドンゴ!!遅くなって!何もなかった?」
    「キャハハ、大丈夫デス。現在マデ異常アリマセン。思ッタヨリは早カッタデスネ」
    「まあね。全部無事旨くいったわ。ドンゴには今度“ドルロイ”に行った時にオイルプレゼントするからね」
    副操縦シートに座りながら、アルフィンは満足そうに笑顔を浮かべた。
    「楽シミにシテイマスヨ、あるふぃん♪」
    ドンゴが後ろから声を掛けた。
    「任しといて!最高のオイルプレゼントするから・・・ってほんとにオイルでいいの?他に欲しいものはないの?」
    後ろを振り返り、アルフィンは微笑んでドンゴを見た。
    「エッ・・・」
    ランプをチカチカさせながら、ドンゴは無言のままアルフィンを見る。
    だが、暫くしてポソポソと呟き始めた。
    「・・・イインデスカ?ホントに欲シイモノを頂ケルンデスカ?」
    一層ランプが点滅して賑々しい。
    「叶えられるものならいいけれど・・・。ま、言ってみなさいよ」
    アルフィンは気軽に声を掛けた。
    「デハ、オ言葉に甘エテ。ぐらびああいどる・てぃあれるチャンの写真集gaガ・・・」
    「却下!!」
    最近話題のヌードグラビアアイドルの写真集と聞いて、アルフィンは速攻で拒否した。
    「デモ今一番欲シイ物ノデス」
    ドンゴも取り合えず食い下がる。プレゼントして貰えれば、それにつぎ込むお金が浮いて他の物に廻せるからだ。
    「二番でも三番でも構わないから、それだけはイヤよ」
    アルフィンの憤怒の表情に、ドンゴはランプを弱々しく点滅させた。
    「ダッテ・・・欲シイモノ言エッテ言ッタノあるふぃんジャナイデスカ?」
    「言ったけどダメったらダメ。乙女になんてものお願いするのよ」
    柳眉が上がって完全におかんむりだ。
    ドンゴもこれ以上は得策ではないと諦めて引き下がった。
    「分カリマシタ。あるふぃんカラ頂ケルナラ何デモカマイマセン」
    「初めからそう言えばいいのよ」
    少し本末転倒気味のアルフィンのセリフだったが、ドンゴはそれ以上突っ込まないことにした。
    ヒステリーでも起こされたら、直撃は免れない。
    まだ当直交代には一時間近くあるのだから。
    「アア・・てぃあれるチャン」
    それでもやはり諦め切れなくてつい呟いてしまう。
    「何時までもしつこい!」
    「ハウウウ・・・」
    ドンゴの哀しい呟きが深夜のブリッジに小さく木霊した。
    それから一時間後、指定の時間に次の当直のリッキーが起きてきた。
    「アルフィーン。交代しよーう」
    眠いのか伸びをしながら生欠伸をしている。
    「寝てたのになんなのよ。その眠そうな顔?」
    副操縦シートから出てリッキーと交代したアルフィンは呆れ顔でリッキーを見た。
    「眠いんだからしょうがないよお。ま、後は任せといて。お疲れ様アルフィン」
    「はいはい、お疲れ様。ドジしないのよ、リッキー」
    「分かってらい」
    「じゃ、頑張ってね」
    リッキーに手を振りながらアルフィンはブリッジを後にした。
    自室に戻って、軽くシャワーを浴びベビードールに着替えると早々にブランケットに潜り込んだ。
    今日は世間一般、宇宙全域でXmas。
    どんな人にも等しくXmasはやって来る。
    やっては来るけれど、等しく楽しめるとは限らない。
    それでもそれなりに楽しめばいい。
    仕事は順調。休暇はもう少し先だけど・・・。
    今年だけがXmasじゃないからね。
    アルフィンは一人ごちて思い出し笑いをしながら、つかの間の休息を得るべく目を閉じた。
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■589 / inTopicNo.4)  Re[3]: それいけサンタガール♪
□投稿者/ 璃鈴 -(2003/12/24(Wed) 22:06:15)
    あとがき

    今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。
    超SSなXmasのお話ですが、今日思いついてこの話だと今日あげないとマズイと思って速攻で書きました。乱筆乱文だとは思いますが、平にご容赦の程。
fin.
引用投稿 削除キー/



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