| 救助のVTOLがやってきた。だが、ジャングルの木々が邪魔して、着陸は出来ない。 通信機から、ジョウの声が流れた。 「収容フックを降ろす」 ジェイクは、気を失っているアルフィンを抱きかかえ、VTOLから降りてきたフックをつかむと、二人の体が離れないようぐるぐると巻きつけた。 「いいぞ、上げてくれ」ジェイクが、合図した。 「リッキー」 「あいよ」リッキーが収容フックのレバーを操作する。 ふわりと、二人の体が地面から浮かび上がった。ジェイクは、アルフィンがのけぞらないよう、抱きかかえてやる。 機体まで、あと20メートルというところで、突然上昇が止まった。 「おい、どうした。早く、引き上げてくれ」ジェイクが怒鳴った。 「あ・・・あれ、おかしいな」リッキーが、収容フックのレバーをガチャガチャ操作するが、反応がない。 「だめだ、兄貴。動かない、故障だ」 ちっ!ジョウが舌打ちした。
「ジェイク、フックがいかれた。このまま、少し移動するから、しっかり掴まっててくれ」 VTOLが、ゆっくりと移動を始めた。 風が刺激になったのか、アルフィンが目を開けた。 「う・・うーん。ここはどこ?」頭が朦朧とする。ジェイクの顔がやたら近い。 「助けが来た。でも、フックがいかれて宙刷り状態だ」 そう言われて、アルフィンは、ジェイクに抱きしめられているのに、気づいた。 「な、なにすんのよ。その手離してよ」 アルフィンが大声でわめき出した。
目が覚めたとたん、これか。ジェイクは苦笑した。 「そうか、わかった。ただ、急いでたから、フックがきちんと縛れなかった。俺が手を離すと、おまえさんは墜落しちまうかもしれん」 「!」 アルフィンの目に恐怖が浮かんだ。この高さからの、墜落は死を意味する。 「でも、お姫様のご要望とあれば、これこのとおり」 ジェイクがぱっと、手を開いた。 「やめてー!離さないで!」 叫びながら、今度はアルフィンが、ジェイクの首にしがみついた。 「冗談だよ、冗談」 ばっと、アルフィンが顔をあげた。 「初心者じゃあるまいし、そんなやわな縛り方するかよ」 「!」 そして、ジェイクは、にやりとして言った。 「おまえ、意外と胸があるんだな」 アルフィンは、すかさず、ジェイクの首を絞めた。 「う、、うわ。やめろ。こんなとこで・・・殺すきか!」 「一遍、死になさいよ」アルフィンの目は本気だ。
リッキーはさっきから、おろおろし通しだ。 二人の会話は、クラッシュジャケットについている通信機を通して、まる聞こえだ。 ジョウの頬が、ひくひく痙攣してる。 今もまだ、二人のじゃれあってる声が聞えてくる。 いや、正確には、アルフィンがジェイクを叩いているのだろう。 「いてて、馬鹿、やめろよ。ほんとに落ちたらどうする」ジェイクの抗議の声が響いてくる。 だが、リッキーには、二人が口喧嘩をしながら、お互いの距離を詰めているように感じて仕方がない。 はあー。こっそりため息をついた。 直ったはずの腹が、しくしく痛みだした。
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