| 「今度の仕事で護衛する予定だったおっさん、破産したんだって?」 ミネルバのリビングで、リッキーが呆れ顔でジョウに向かって言った。 「ああ、会社の不正がばれて、あっという間に1文無しになっちまったんだってさ。ま、自業自得って事かな。あれじゃ、違約金もとれやしない。」 とほほ、っといった顔でジョウも呟く。 「本当に何にも残らなかったの?」 アルフィンが疑う様に訊く。 「本当に残らなかったらしい。債権者にヤバイのがいて、根こそぎ持ってかれたらしいぜ。にっちもさっちも往かなくなって、自己破産したらしい。」 そこへタロスがスケジュールを見ながら言った。 「ジョウ、次の仕事まで1ヶ月ちょい、ありますぜ。どうします?」 その言葉を待っていた様にリッキーが飛び跳ねた。 「兄貴、休暇にしようぜ、休暇♪仕事入れるなんてヤボな事しないでさぁ〜。」 「この、おとぼけぐうたら坊主!なに言ってやがんだ。」 「じゃぁ〜タロスだけ仕事してろよ!一人でさっ!」 「あんだとぉ〜!!」 「あちゃー、又始めちまいやがった・・・。」 ジョウは頭を抱えた。実際、1ヶ月の仕事が無くなった。新たな仕事を入れるには ちょっとどうかと考える期間だ。 「ねえ、ジョウ。この際だから、リッキーの言うとおり,休暇にしちゃいましょうよ。」 アルフィンも顔を輝かせながらさらに続ける。 「でね、こないだ見たニュースでね、地球の温泉地の特集やってたのよ♪」 「は?」 アルフィンはすでに休暇モードに突入したらしい。まだ休暇にすると決定してないのに、だ。 「あのねー、いままでのオフって、海辺のリゾート地ばっかだったじゃない?たまにはちょっと変った処にも行ってみるのもいいんじゃないかしら?」 こうなってしまっては、誰もアルフィンを止められない。既にアルフィンの目はキラキラ輝きだし、自分の世界に入っているのは一目瞭然だ。 その様子を見て、タロスもリッキーも既にケンカをやめている。 「その温泉の在る所はね、地球の日本って処らしいの。今の時期、雪か積もっててとっても綺麗らしいわ♪」 手を胸の前に組み、うっとりした表情。・・・すでに陶酔している。 「・・・、ジョウ、どうします?」 タロスがジョウにしか聞こえないように囁く。 「こうなっちまったら、仕方ないだろう?」 ジョウも諦め顔だ。 「分かった、分かった。じゃ、次の仕事は入れずに休暇にする。で、行き先はアルフィンに任せる。」 「さっすが、兄貴!やったぁーい!」 リッキーは飛び跳ねて喜んだ。 「いやぁーん、ジョウったら分かってるじゃない!!」 アルフィンはジョウの首に両腕を廻し、抱きついた。 「わわわわわ、分かったから、アルフィン、分かったから!」 ジョウは真っ赤になってアルフィンを引き剥がす。 タロスとリッキーはにやにやしながら、 「で、何時出発?」 と同時に聞いた。2人共、気分は休暇に突入している。 「そりゃ、」 ジョウはニヤッと笑いながら 「すぐ出発、だろ?」 「イェーイ!流石兄貴、分かってるぅ〜♪」 「ちょっと遠いからな、宿泊先は道中予約してくれ、プランはアルフィンに任せる。いいか?」 「まっかせてぇ〜♪」 ・・・これが間違いの始まりである事を今は誰も知らない・・・。
|