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■32 / inTopicNo.1)  雪降る温泉宿♪
  
□投稿者/ 剣流星 -(2002/02/24(Sun) 20:03:11)
    「今度の仕事で護衛する予定だったおっさん、破産したんだって?」
    ミネルバのリビングで、リッキーが呆れ顔でジョウに向かって言った。
    「ああ、会社の不正がばれて、あっという間に1文無しになっちまったんだってさ。ま、自業自得って事かな。あれじゃ、違約金もとれやしない。」
    とほほ、っといった顔でジョウも呟く。
    「本当に何にも残らなかったの?」
    アルフィンが疑う様に訊く。
    「本当に残らなかったらしい。債権者にヤバイのがいて、根こそぎ持ってかれたらしいぜ。にっちもさっちも往かなくなって、自己破産したらしい。」
    そこへタロスがスケジュールを見ながら言った。
    「ジョウ、次の仕事まで1ヶ月ちょい、ありますぜ。どうします?」
    その言葉を待っていた様にリッキーが飛び跳ねた。
    「兄貴、休暇にしようぜ、休暇♪仕事入れるなんてヤボな事しないでさぁ〜。」
    「この、おとぼけぐうたら坊主!なに言ってやがんだ。」
    「じゃぁ〜タロスだけ仕事してろよ!一人でさっ!」
    「あんだとぉ〜!!」
    「あちゃー、又始めちまいやがった・・・。」
    ジョウは頭を抱えた。実際、1ヶ月の仕事が無くなった。新たな仕事を入れるには
    ちょっとどうかと考える期間だ。
    「ねえ、ジョウ。この際だから、リッキーの言うとおり,休暇にしちゃいましょうよ。」
    アルフィンも顔を輝かせながらさらに続ける。
    「でね、こないだ見たニュースでね、地球の温泉地の特集やってたのよ♪」
    「は?」
    アルフィンはすでに休暇モードに突入したらしい。まだ休暇にすると決定してないのに、だ。
    「あのねー、いままでのオフって、海辺のリゾート地ばっかだったじゃない?たまにはちょっと変った処にも行ってみるのもいいんじゃないかしら?」
    こうなってしまっては、誰もアルフィンを止められない。既にアルフィンの目はキラキラ輝きだし、自分の世界に入っているのは一目瞭然だ。
    その様子を見て、タロスもリッキーも既にケンカをやめている。
    「その温泉の在る所はね、地球の日本って処らしいの。今の時期、雪か積もっててとっても綺麗らしいわ♪」
    手を胸の前に組み、うっとりした表情。・・・すでに陶酔している。
    「・・・、ジョウ、どうします?」
    タロスがジョウにしか聞こえないように囁く。
    「こうなっちまったら、仕方ないだろう?」
    ジョウも諦め顔だ。
    「分かった、分かった。じゃ、次の仕事は入れずに休暇にする。で、行き先はアルフィンに任せる。」
    「さっすが、兄貴!やったぁーい!」
    リッキーは飛び跳ねて喜んだ。
    「いやぁーん、ジョウったら分かってるじゃない!!」
    アルフィンはジョウの首に両腕を廻し、抱きついた。
    「わわわわわ、分かったから、アルフィン、分かったから!」
    ジョウは真っ赤になってアルフィンを引き剥がす。
    タロスとリッキーはにやにやしながら、
    「で、何時出発?」
    と同時に聞いた。2人共、気分は休暇に突入している。
    「そりゃ、」
    ジョウはニヤッと笑いながら
    「すぐ出発、だろ?」
    「イェーイ!流石兄貴、分かってるぅ〜♪」
    「ちょっと遠いからな、宿泊先は道中予約してくれ、プランはアルフィンに任せる。いいか?」
    「まっかせてぇ〜♪」
    ・・・これが間違いの始まりである事を今は誰も知らない・・・。
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■33 / inTopicNo.2)  Re[1]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/02/24(Sun) 20:09:37)
    これは、安彦さんの仕事全集に付いてたポスターを見て「おお、こりわ・・・。」
    と思ってネタにしたモノです。
    持ってる人、見た事のある人は分かると思いますが。(笑)
    ・・・すいません、続きます。短くまとめようとすればするほど、妙な方向へ進んでいってしまい、訳わかんなくなってます。(焦)
    この先、暴走する事間違いなしです。特にジョウ、むちゃくちゃにします。
    だから、イメージ大事にしたい方、読まない様に。(笑)
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■34 / inTopicNo.3)  Re[2]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/02/26(Tue) 22:06:23)
    アルフィンはうきうきしながら、自室へ向かった。
    先日ニュースで見た温泉地への問い合わせを何処にしたらいいか、番組宛にメールしておいたのだ。
    「返事はきてるかしらぁ〜♪」
    ポンとコンソールキイをたたく。見慣れない長ったらしいSUBが目に入る。
    (地球旅行代理店日本支社“日本の温泉地情報”への問合せ先。)
    「あ、来てる、来てる!」
    内容を見てみると、下記のアドレスへご連絡下さい。としてある。
    「早速、連絡とってみなきゃね♪」
    アルフィンはルンルン気分でコールをかける。
    「・・・・、はい、こちら、地球旅行代理店日本支社です。」
    歯切れの良いオペレーターが数度のコールで出た。
    「あのー、温泉地へ行きたいんですけど、良いトコ教えて下さい♪」
    「はい。どういった泉質の温泉をお探しですか?」
    「え、泉質?」
    「はい、泉質のほかに、砂風呂、冷泉、泥湯、薬湯、お湯の種類がいろいろあります♪」
    オーペレーターは温泉の泉質と種類をアルフィンに尋ねてきた。これを聞いた瞬間、アルフィンの頭の中はぐるぐる回った。そう、すでに訳が分からなくなってしまっていたのだ。
    「え、ええ、あの〜・・・、」
    言い詰まったアルフィンの様子を察して、オペレーターは言葉をついだ。
    「お客様、温泉地へのご旅行は、初めてでらっしゃいますか?」
    このオペレーターの言葉は、アルフィンにとって救いの言葉だった。が、のちのちとんでもない事になる前兆であろうとは今、知るすべはない。
    「はい、そうなんです。このあいだのニュースを見て・・・」
    と、ニュースで見た温泉地の話をアルフィンは切り出した。


    アルフィンが自室へ戻った後、ジョウ達3人はそのまま、リビングに残っていた。
    「兄貴、アルフィンに任せて大丈夫なのかい?」
    リッキーが少し不安げに聞く。
    「しょうがないだろう、勢いで任せちまったし。今更こっちが決めるったって、聞きゃしないだろう?」
    諦め顔のジョウが言う。
    「アルフィンに限って、そう変な処は選ばんだろう。いいんじゃねぇか?今ままでは、こっちが決めて事後承諾って形をとってたんだしな。」
    タロスは楽観的だった。
    「・・・、なぁーんか、やな予感がする・・・。」
    「そんなに言うんなら、お坊ちゃんだけ<ミネルバ>で留守番しててもいいんだぜ?ドンゴと遊んでな。寂しく、な。」
    タロスは、けけけと笑いながらリッキーを挑発した。
    「んっだとぉ〜!!!このデカブツおやじ!!」
    「あーあ、又、始めやがった。好きにしてくれ。俺は当直だから、ブリッジに行ってるからな。って、聞いてねーか。」
    ジョウは、ぎゃーぎゃー騒いでいる2人を呆れ顔で一瞥すると、さっさとリビングを出て行った。


    翌朝。
    リビングに集まっていた3人を前にして、
    「ねーね、決まったわよ。」
    アルフィンが開口一番に昨日の件を話し出す。
    「ニュースで流れた処は、もう予約で一杯になってたんだけど、オペレーターの人が良いツアーを組んでくれたの♪」
    「へ、へぇー、ど、どんなツアーなんだい?」
    リッキーが、どぎまぎしながら聞く。
    「雪山が堪能できる、秘境温泉ツアー。だって。」
    雪山・・・、秘境・・・。
    この2つの言葉を聞いて、ジョウ、タロス、リッキーはいや〜な予感を憶えた。
    「ア、アルフィン、その、雪山ってのと、秘境ってのはどういう意味合いなんでしょうか?」
    こわごわ、リッキーが尋ねる。言葉が敬語になっている。
    「大丈夫よ〜、オペレーターの人が選んでくれたんだし、ちゃんと送迎付きだし。温泉の泉質だって、<打ち身、切り傷、皮膚病、婦人病、冷え性>ええっと、とにかく沢山だし、肌もつるつるになるって♪雪山ってたって、ちゃんとした設備もあるって言ってたし。心配ないわよ〜。」
    「そ、それならいいんだけどさ・・・。」
    リッキーは説明を聞いても、まだ不安そうである。
    「えっと、連泊で、1週間にしといたわ。残りの1週間はハワイにしといたから。やっぱ、ビーチにも行きたいでしょ?3人共。」
    「寝たおすんなら、ビーチがいいですな。」
    心なしか、ホッとした様な声を出すタロスだった。
    「ま、何はともあれ、明日には地球に着くんだ、皆、支度しとけよ。」
    雪山だからなー、なに持っていこうか、スキー板は現地調達だとか、それぞれ喋りながら、各自、いそいそ自室へと戻っていった。
    ・・・、これから始まる悪夢(!?)の数日間が待っているとも知らずに・・・。
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■36 / inTopicNo.4)  Re[3]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/02(Sat) 20:25:43)
    <ミネルバ>は宇宙港のあるトキオシティーに入港していた。
    「ドンゴ、後は頼むぜ。一週間経ったら戻るから。その間に船内チェックと機器メンテを頼む。」
    今日のジョウは、クラッシュジャケットを脱いで、Gパンにベージュのセーター、厚手のジャケットにブーツといった出で立ちだ。他の3人も似たような格好である。
    「キャハハハ。マッカセナサイ。じょう達ガ戻ッテ来ルマデニ完璧ニシトキマス。キャハハハ。」
    「じゃ、ドンゴ。行ってくるぜ!」
    「りっきー、迷子ニナラナイヨウニ気ヲツケテ下サイヨ。キャハハハ。」
    「っんだとーーーーー!!!」
    リッキーはドンゴにつかかって行く。タロスはニヤニヤ笑って、
    「さあ、喧しいガキは置いて、さっさと行きましょうぜ。」
    わざとらしく早足でその場から去る。
    「そーねー、さっさと、行きましょ♪」
    アルフィンもここぞとばかりにタロスに同調する。
    「じゃあ、出発しようか。」
    ジョウまで、わざとらしく早足で<ミネルバ>を出て行く。
    「あ゛ー、おいてけぼりは無しだぜーーーー!!」
    リッキーは慌てて3人の後を追った。
    「キャハハハ、イッテラッサーイ。生キテ帰ッテ下サイヨ!キャハハハハ。」
    縁起でもないドンゴの見送りの言葉を受け、4人は<ミネルバ>を降りた。


    「ええっと、18番ターミナル、日本時間14時。入り口前でガイドの人と待ち合わせっと。今、13時40分。今から行けば丁度良い頃ね。」
    アルフィンは持ってきた日程表を見ながら確認をしている。
    「ガイドが付くのか?」
    ビックリした様にジョウが聞く。
    「うん、ツアーコンダクターってんだって。いろいろ案内してくれるそうよ。」
    「親切だねー。今時、そんなサービスしてるトコがあるんだ。」
    リッキーが目を丸くして言う。
    「ま、変な所に連れて行かなければ、だがな。」
    タロスが茶々を入れる。
    「それ、本当になったりして。」
    リッキーが冗談で言った。
    「わははははは。」
    4人は笑いながら、18番ターミナルに向かった。入り口が見えてきたとき、4人は声を失った。
    <歓迎、クラッシャージョウ様ご一行様>
    こう書かれた旗を持っているいかにもガイド!といった風のスーツを身にまとった20代半ばくらいの男が入り口にたたずんでいる。
    「うわぁ、なんじゃ、ありゃ。」
    リッキーが嫌そうにアルフィンを見る。
    「え゛ー、ガイドって、あんななのー?」
    アルフィンも、うわーってな顔になっている。
    ジョウとタロスにいたっては、頭を抱えて唸っている。
    「アルフィン、責任とれよ。1人でガイドん所いってあの旗下げさせて目立たなくしてくれよ。じゃないと、あそこには恥ずかしくて行けないよ。」
    リッキーにそう言われて、
    「あーったわよ、行くわよ、行けばいいんでしょ!」
    自分がセッティングした負い目もあるのか、素直に応じるアルフィンだった。
    3人が遠巻きにアルフィンとガイドの男を見てると、ガイドの男はぼーっとアルフィンに見とれた後、ペコペコ頭を下げていた。
    「兄貴、」
    リッキーが、あちゃーっと頭に手を当てた。
    「・・・なんだ。」
    「ありゃ、アルフィンに一目惚れしたらしいぜ。正体、知らないし。」
    突然リッキーがにやけて言った。
    「黙ってるか、おとなしくしてるとあの顔立ちですからな。」
    タロスまでにやけてジョウを見る。
    「俺にどうしろってんだ。」
    不機嫌になったジョウが2人を睨む。
    「いーや、気をつけた方がいいんじゃないかと・・・ね。」
    声を揃えて2人が言う。完璧に嫌味だ。それも、面白がっている。
    文句を言おうとした所に
    「ねー、出発時刻だって。シャトルに乗り込んでくれだって。」
    アルフィンが旗を下げさせたガイドを連れて3人の所にやってきた。
    「あのね、こちら、番茶さん。」
    アルフィンがガイドを3人に紹介した。
    「えっと、こっちがチームリーダーのジョウ、大っきいのがタロス、小っちゃいのがリッキー。」
    ガイドにメンバーを紹介する。
    「番茶と申します。1週間、宜しくお願いします。」
    ジョウより少し背の低いひょろっとした男である。かなり、ひ弱そうだ。
    「うっはー、大丈夫かよ・・・。」
    3人は同時に同じことを考えていた。
    「なにか?」
    番茶に聞かれて、
    「い、いや、こちらこそよろしく。」
    ひきつり笑いをしながら、握手をするジョウであった。
    「では、搭乗時間も迫ってますので、シャトルの方へ搭乗して下さい。」
    そう言って番茶は4人にチケットを手渡した。

    シャトルには1時間ほど乗っていただろうか。
    「此処からは、目的地まで私が車でご案内します。」
    「は、車?」
    4人は、ほけたまま番茶の後について行った。
    そこには、エアカーでなく、タイヤ(!)のついた4輪駆動車(チェーン付き)があった。
    「ひ、ひぇー。」
    リッキーは青ざめていた。
    「こ、これ、動くの?」
    アルフィンは不安を丸出しで番茶に聞く。
    「はい。もちろんです。当社自慢の車です。さあ、乗ってください。こう見えても、運転には自信があるんですよ♪」
    にこにこしながら番茶が言う。
    「じ、自信ねー。」
    タロスの青白い顔色が、更に青くなっていった。
    ジョウにいたっては、気分が優れないっといった風に頭を抱えていた。
    4人はしょうがなしに、番茶の車に乗った。
    「雪山が堪能できる、秘境温泉ツアー!じゃあ、出発しますよー♪」
    沈んだ4人を尻目に、1人明るい番茶であった。
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■39 / inTopicNo.5)  Re[4]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/06(Wed) 20:47:26)
    ジョウ達5人を乗せた車は、最初の頃こそ街と言える場所を走ってはいたが、
    (とは言っても、建設制限されている為、6階以上の建物は無いが。)
    どんどん建物は消え、道もハイウェイとはほど遠いものになり始めていた。
    「ち、ちょっと〜、何処へ向かってるのよ〜。」
    アルフィンがたまらず、番茶に尋ねる。
    「え、宿に向かっているんですけど?」
    なんでそんな事を聞くのかと言った風に番茶は答える。
    「なんかさー、どんどん街から遠ざかって行くし、人気も無くなってるし。」
    リッキーもたまらず番茶に不安をぶつける。
    「大丈夫ですよ〜、ちゃんと宿に向かってますから。なんてったって、雪山が堪能できる、秘境温泉ツアーですから♪心配ありません!」
    ・・・たがらよけいに心配なんだよ。(涙)ジョウは心の中でそう思ったが、言葉にしたらよけいに気が重くなりそうだったので、頭を抱えるだけ(!?)にした。
    「・・・ジョウ、」
    タロスがジョウに耳打ちをした。
    「あたしゃ、嫌な予感がするんですがね・・・。」
    半ば諦めたような投げやりな言い方をした後、タロスは大きなため息を1つした。
    「・・・俺に言うな。」
    ジョウは抱えていた頭をさらに抱える羽目になった。


    4人の不安をよそに、外の風景はどんどん雪の色、白一色となっていった。
    番茶以外の顔色も、雪の色と同じ様になっていった。
    「どーしたんです、皆さん、顔色が悪いですよ?車酔いしましたか?」
    番茶が心配そうに皆の顔を見る。
    あほ、クラッシャーが車ごときに酔うか。行き先に不安がてんこ盛りなんだよ!と言いたかったが、誰も言葉にする気が無い。というか、気力が萎えていた。
    「もうすぐですから。頑張ってくださいよ。」
    そういえば、車に乗って早3時間ほど経とうとしていた。
    あいも変らず、外の景色は真っ白である。と、思っていたら、前方に建物らしきものが見えてきた。
    「ほら、見えてきました。あれが、皆さんがお泊りになる宿、霧雨です。」
    前方には雪が積もった藁葺き屋根の日本家屋が見えた。
    「着いたの?本当に着いたの?」
    少し生気を取り戻したアルフィンが口を開いた。
    「はい。これからチェックインして頂いて、お部屋にご案内致します。ここの客室は、全て離れになっております。あ、離れってのはコテージと同じ意味ですね。さあ、着きました。」
    車は建物玄関前に横付けされた。ホテルの仲居さんが車のドアを開けた。
    「いらっしゃいませ。お疲れでしょう。ささ、お部屋へご案内致します。」
    番茶が連絡を取っていたのか、段取りよく仲居が皆を案内する。
    「私は諸手続きを済ませた後で、お部屋の方に伺います。お荷物の方は先にお部屋の方へ届いております。あ、仲居さん、頼みますね。」
    番茶は仲居に案内を頼むと、手続きをしにフロントへ足を運んだ。
    「では、こちらへ。」
    仲居に促され、4人はロビーへ向かった。
    「当宿は、客室が全て離れ形式になっております。ですが、離れと母屋の通路はシールドを施してありますので、雪や寒さの心配はございません。」
    仲居は宿の説明、避難通路、温泉の説明を一通りした。
    「それと、当宿のサービスといたしまして、お客様に浴衣を自由に選んで頂いておりますの。種類は女性の方が多いですけれど。」
    そう言って、浴衣が置いてある部屋に案内された。
    「うわーーーーー!」
    悲鳴にも似た叫び声をあげたのはアルフィンである。
    「か、かわいいーーー!」
    こうなったら御終いである。選ぶのに時間がかかるのは目に見えている。
    男性陣はさっさと浴衣を選んだ。ジョウは無地の紺色の浴衣。リッキーは白地に宿の名前の入ったオーソドックスなもの、(実はこれが一番沢山置いてあった。)
    タロスもリッキーと同じものにした。(と言うより、タロスに合うサイズがこれしか無かったのだ。)
    「お嬢様はお選びになるのに時間が掛かりそうなので、男性の方、先にお部屋にご案内致します。」
    仲居が気を利かせて別の仲居を呼び、ジョウ達だけ、先に部屋へ行く事になった。
    「アルフィン、ゆっくり選んできな。」
    ジョウが言葉を掛けたが、浴衣を選ぶのに必死なアルフィンの耳に声は届いていない。目の色が違う。
    「ささ、こちらへ。」
    仲居に促され、3人は浴衣部屋を後にした。
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■42 / inTopicNo.6)  Re[5]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/07(Thu) 21:54:16)
    ジョウ達は母屋を出て、日本庭園へ出た。シールドは通路のみになっているらしく、庭木には雪が積もっている。
    「四季折々の景観を大事にしているんです。雪景色が終わる頃には、梅、桃、桜の順でそれは見事に花をさかせますの。」
    仲居が説明を始める。
    「離れの方には、内風呂と致しまして、室内風呂と露天風呂とございます。もちろん、大浴場の方も母屋の方にございます。あと、山の方には大露天風呂もございますので、是非お入りになって下さい。」
    そうこうしているうちに、ジヨウ達は離れに着いた。
    「此方で御座います。」
    仲居に案内されたのは、瓦葺のこじんまりした一軒屋だった。
    引き戸をガラガラと開け、玄関に入る。ちょっとした土間だ。
    「此方で靴を脱いで上って頂きます。浴衣に着替えられましたら、此方の草履をお使いになって下さい。」
    土間には男物の草履が3つと、女性用の草履が1つ並べてあった。
    3人と仲居は部屋へ上がると、先に着いていた4人の荷物の確認をした。
    「ねえ、おいら達の荷物なんだけど、同じシャトルで来たはずなのにおいら達より早く着いているのは何故だい?」
    とんでもない答えを仲居が言った。
    「ええ。エアポートから当宿まで、1時間もあれば着きますもの。」
    「・・・へ?」
    3人はどうして、何故?と言った顔をしていたのか、
    「番茶さんのツアーで来た方は皆様、そんなお顔をされますわ。」
    くくくっと仲居は笑い、
    「エアカーで来れますの。ハイウェイとも繋がっていますのよ。」
    「な、なんだってーーーー!?」
    3時間以上かけて地獄の思いをしてきたのはなんだったのか・・・。
    「なんでも、雪山を堪能してもらうには車で来るのが一番だしって、仰ってましたよ。今時、タイヤ付きの車まで用意されて。いかにも、今から秘境に行きますって雰囲気を出したいらしいですよ。」
    あ、あんにゃろ〜〜〜!!!3人は拳をぷるぷる振るわせた。
    「えっと、それじゃあ、浴衣の着方をお教え致します。そこの坊や。」
    突然、坊や、と呼ばれたリッキーはビックリして
    「お、おいらの事?」
    「はい、ちょっと、こっちへ来てください。」
    リッキーが仲居の傍に行くと、
    「はい、ちょっと失礼。」
    仲居はリッキーを捕まえて着ている服をはぎ取り出した。
    「ヴ、ヴぁーーーー、なにすんだぁーーーー!」
    抵抗むなしく、リッキーはパンツ1つにされた。
    ジョウとタロスは、その様子を成すすべも無く見ているしか出来なかった。
    うわー、俺でなくて良かった。2人は心底そう思っていた。
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■47 / inTopicNo.7)  Re[6]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/09(Sat) 14:52:26)
    着ている服を剥ぎ取られたリッキーをモデル(!?)にして、仲居は浴衣の着方を実践し始めた。
    「えー、まず、浴衣を着て頂きまして、合わせは左を上にして下さい。右を上にすると、死装束になりますから。」
    「死装束?」
    3人は仲居に聞き返した。
    「はい。日本では、亡くなった方に真っ白な着物を着せてお送りするんです。生きている者とは反対の合わせにして。」
    「ふーん。」
    そう言っているうちに、
    「あとは、帯を腰の所で調節して、結んで出来上がりです。お寒うございましたら、羽織もご用意してありますので、どうぞお使い下さいませ。それでは、私はこれでお暇致します。御用のございます時には、フロントの方へご連絡ください。」
    「あ、ありがとうございました。」
    3人は礼をいうと、ぺこと会釈を1つして仲居は離れから出て行った。
    「あ゛ー、えらい目にあった・・・。」
    リッキーはどかっと畳の上に大の字に寝転がった。
    「お似合いでしたぜ、着せ替え人形のお坊ちゃん♪」
    さっそくタロスがリッキーをからかい始めた。
    「あ゛んだとーーーー!タロスじゃでか過ぎて、仲居のおばちゃんが敬遠したんだよ!おいらが、ちょうどよかったから、しかたなしに協力してやったんだい!!」
    あぁ、リッキーフォローになってない。
    ギャーギャー2人が騒いでる所に
    「あのー、失礼します。」
    番茶の声がした。
    「ご夕食は8時30分からになっておりますので、皆様、温泉で一汗流してこられてはいかがですか?えっと、お食事はお部屋で取って頂きますので、前後にはお部屋の方にいらっしゃって下さい。」
    説明が終わると、
    「番茶〜、なんでわざわざ車、それもタイヤ付き(おまけにチェーンき!)のめんどくさいツアー組むの?会社命令なのかい?」
    いつの間にかタロスとのケンカを辞めたリッキーが番茶に聞いた。怒る気はうせ、呆れたよな言い方で聞く。
    「いえ、其の方が、秘境に来た〜って、気になるでしょ?それに、会社命令ではなく、私の提案で始まったツアーなんですよ。でも、こんなに面白そうなツアーなのに、お客様のうけが今ひとつなんですよねー。どうしてでしょうか?」
    不思議そうに聞いてくる番茶。
    3人はこいつは鈍いんじゃなくて、人並みの感覚を持っていない事にようやく気がついたのであった。
    「・・・一週間、持つんだろうか。」
    ジョウはガックシと頭を垂れた。
    「そう言えば、アルフィンさんがいらっしゃいませんね。どうしたんですか?」
    妙にそわそわして、番茶が聞く。
    「ああ、アルフィンは浴衣部屋に篭ってて、まだこっちへ来てないんだ。」
    ジヨウが番茶にそういうと、
    「浴衣を着られた彼女は綺麗でしょうね〜♪」
    ・・・うっとり。アルフィンの浴衣姿を想像でもしているのだろう。自己陶酔している番茶であった。
    ああ、そうだった。こいつはアルフィンに一目惚れしてたんだった。その姿を見て、3人は思い出した。リッキーとタロスは、怖いもの知らずだ。なんて恐ろしい・・・。と思ったが、ジョウだけはちょっとムッとしていた。
    そこへアルフィンが深い紺色の生地に白百合をあしらった浴衣を着て入ってきた。
    「ね〜、どう?」
    4人は息を呑んだ。それほどその浴衣はアルフィンに似合って、彼女の美しさを引き立たせていた。
    「き、綺麗ですぅーーーーー!!」
    いの一番に番茶が答えた。
    「あら、嬉しい。ありがと、番茶さん。」
    嬉しそうにアルフィンが微笑む。
    「い、いえ、本当にそう思ったんです。本当に綺麗です。はい、良くお似合いですぅ〜。」
    番茶はアルフィンに礼を言われたもんだから、舞い上がってしまっていた。顔は真っ赤になって、興奮している。
    「ねぇ、あんたたちは?」
    アルフィンは3人に向き直って聞いた。
    「え、に、似合ってるよ、いいじゃん。」
    「ええ、よく、似合ってますぜ。」
    タロスとリッキーは差しさわりのない返事をしておいた。(じゃないと、後でとんでもない目に合うのが怖かったのだ。)
    「・・・ジョウは?」
    一番褒めてもらいたいジヨウに、アルフィンは上目遣いで尋ねた。
    「ああ・・・、いいんじゃないか?」
    そっけない返事である。本当は綺麗だ、の一言も添えてやればいいのだろうが、番茶の言葉にちょっとムカついたジョウは、それしか言わなかった。
    「うーん、つまんない!!」
    一番気にして欲しいジョウがそっけなかったので、アルフィンの機嫌が悪くなった。
    「・・・皆様、私は母屋のガイド専用室におりますので、何かあったらお呼びください。」
    どよーんとしてきた空気が分かったのか、番茶はそうそうに離れを後にした。
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■49 / inTopicNo.8)  Re[7]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/12(Tue) 20:41:58)
    番茶が部屋をでていった後、ぶーっと膨れているアルフィンに
    「ち、ちょっとこっち来てくんないかな。」
    リッキーは逃げ腰気味ではあるが、声を掛けた。
    「あによ。」
    不機嫌なアルフィンはリッキーをキッと睨みつけた。
    「い、いいから、ちょっと。」
    びびりながらではあるが、リッキーは意を決してアルフィンの腕を掴んで外へと引っ張り出した。
    「あによ!なんの話があるってのよ!!」
    アルフィンは、怒りまくり状態になっていた。
    「ア、アルフィン、落ち着いて、落ち着いて聞いてくれよ。」
    「落ち着けですって!!」
    今にもリッキーを殴り倒しそうな勢いでアルフィンは声を荒げた。
    「あ、兄貴がさ、そっけなかった訳だよー。」
    半分泣きそうなリッキーが震えながら言った。
    「えっ?」
    先ほどまで、怒り狂っていたアルフィンはリッキーの言葉に正気(?)に戻った。
    「あのさ、番茶がアルフィンの浴衣、褒めまくったじゃないか。」
    「ええ、そうね。」
    アルフィンはジヨウしか見てなかったのか、そーいえばっ、て感じで思い出したらしい。
    「初めはさ、4人とも見とれてたんだぜ、アルフィンの浴衣姿に。」
    「あら、だったら、あんなそっけなくしなくても・・・。」
    「あ゛ー、分かってないなー、兄貴はな、ヤキモチ焼いたんだって!」
    「え、ヤキモチ?」
    リッキーの言葉に、アルフィンは驚いた。
    「何故?何故分かるの?」
    ジヨウに限ってそんな事無いような、あって欲しいような、複雑な声色だ。
    「だって、番茶がアルフィンのコト褒めまくってたろ?それ見て兄貴、ムッとしてたもんな。」
    リッキーは必死である。オフ初日からこれでは、後々大変である。それだけは絶対に避けたい。それに、ジヨウがヤキモチを焼いたのは、リッキーが見てもはっきりと分かっていたので、真実(!)をアルフィンに告げたのだ。
    「でも、それが本当なら、・・・嬉しいかも♪」
    アルフィンの機嫌が戻った。よっしゃ!っとリッキーは思った。あとは、この状態が続くようにするだけだ。
    「晩飯まで時間があるみたいだから、皆で温泉入りに行こうよ。あ、飯は部屋に持ってきてくれるんだってさ。」
    「そうね、そうしましょ。」
    「じゃ、タロスと兄貴ん所へ戻ろう。」
    アルフィンとリッキーは連れ立って離れへ戻って行った。
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■50 / inTopicNo.9)  Re[8]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/13(Wed) 19:03:32)
    リッキーがアルフィンを部屋から引っ張り出した後、タロスがジョウに向き直って言った。
    「ジョウ、もちっと大人になりませんか?」
    「俺がまだ、ガキだとでも言いたいのか。」
    ムッとしてタロスを睨む。
    「いえね、そう言う意味じゃなくてですね、お世辞でもいいから、もう少し褒めてやれば良かったんじゃないかと。」
    困った様にタロスが言う。
    「番茶の言動にヤキモチ焼いてるようじゃ、ねぇ。」
    ニヤリと笑って、ジョウを見る。
    「や、ヤキモチなんて俺は焼いてないぞ!なんで俺が焼かなきゃならないんだ!?」
    真っ赤になってジョウは反論する。
    「ありゃ、リッキーにも分かったぐらいですぜ?違うんですかい?」
    ニヤニヤ笑いながら、タロスは続ける。
    「仕事ん時はそれでもいいでしょうが、オフん時くらいはもちっとアルフィンをかまってやってもいいんじゃないんですかい?」
    「か、かまってるじゃないか。皆で楽しくやってるじゃないか。」
    茹蛸の様になったジヨウが反論する。
    「いえね、そうじゃなくて、アルフィンは、ジョウに綺麗だって言って欲しかったんですよ。」
    「言ったじゃないか!皆!!俺も、いいんじゃないかって。」
    「だーかーらー、アルフィンは、あっし達は眼中にないんですって。ジョウに綺麗だって、言って欲しかったんですよ。ま、あっし達も、言わなかったら言わなかったで、とんでもない事にはなりますがね。」
    「なんでだよ。」
    タロスは、あぁーあとばかりに頭を抑えながら
    「鈍感ですなぁー。」
    「・・・分かってはいるんだよ。だけどなー。」
    「だけど、なんですかい?」
    タロスは、真っ赤になっているジョウを見ながら、意地悪く聞く。
    「木っ端ずかしくって、んな事、言えるか!」
    「はっはっは、ちげぇねーや!!」
    タロスはこらえ切れずに声を上げて笑った。
    バツが悪そうにしていたジョウも、タロスに吊られて笑った。
    「じき、リッキーがアルフィンと戻ってきますぜ。少しは機嫌も直っているでしょう。たぶん、風呂にでも行こうと言い出すでしょうから、ちゃんと言ってやんなせぇ。」
    「んな事言ってもなぁー。」
    ジョウは、髪の毛をぐしゃっと掻いてほとほと困った様子である。
    「あっし達は先に出て行きますから。オフ初日からアルフィンの機嫌損ねっぱなしにしたら、後々大事ですぜ。・・・それだけは勘弁してくだせぇよ。ジョウの一言に懸ってるんですから。」
    「・・・責任重大って事か。なんだかなぁー。」
    「たのんますぜ。」
    にやーっと笑ってタロスが言う。
    「・・・こいつ、人事だと思って。やれやれ・・・。」
    ジョウはしょーがねぇか、っと諦めの表情を浮かべた。
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■58 / inTopicNo.10)  Re[9]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/18(Mon) 20:47:41)
    「兄貴〜〜〜、飯まで時間あるからさぁー、温泉行こうぜ〜。」
    リッキーが機嫌良く部屋に入ってきた。
    どうやら、アルフィンをなだめるのに成功したらしい。
    「温泉目当てに来たんだから、めいっぱい入んなきゃね♪」
    すっかり機嫌の直ったアルフィンが言う。
    ・・・よかった、っとジョウとタロスは心底ホッとした。
    「じゃ、すぐ行きましょうぜ。」
    タロスはジョウをチラッと見て、さっきの件、たのみましたぜと言わんばかりに
    「ほれ、リッキー、先に行くぞ。」
    「へ?」
    「じゃ、お先に。」
    待てよ、と声をかける間もなく、ほけているリッキー引っ張ってタロスは出て行ってしまった。
    「あの2人、そんなに温泉入るの、楽しみにしてたっけ?」
    アルフィンはう〜んと考えていたが、
    「ジョウ、私達も行きましょ♪」
    とジョウに声をかけた。
    「ああ、そうだな。」
    「じゃ、支度してくる。待ってて。」
    そう言うと、アルフィンは自分の荷物を持って、隣の部屋へ入っていった。
    「・・・この調子じゃ、言わなくてもいいか、な。」
    やれやれと思って、ジョウはふぅーっと1つため息をついた。
    3〜5分ほど待っただろうか。
    「おーい、まだかぁー?」
    ジョウが声をかけると、襖がすっーっと開いて、アルフィンが頭だけをひょこっと出した。
    「ねぇ、ジョウ。ここ、内風呂それも、部屋用の露天風呂があるんですって?」
    ジョウはいきなりの質問に
    「は?・・・ああ、そういえば、仲居のおばちゃんがそう言ってたな。」
    アルフィンがニコッとわらって、
    「ねぇ、ジョウ、部屋用の露天風呂に入らない?」
    「へ?じゃあ、先に入れよ。俺は後でいい。」
    「もー。1人で入っても楽しくないでしょ?」
    アルフィンは意味ありげにジョウを見る。
    「だって、アルフィンはどっちの風呂に行っても、1人で入らなきゃならないじゃないか。」
    「んもー、鈍感!外風呂はだめだけど、内風呂は大丈夫じゃない。誰もこないんだし。」
    「は?????」
    はぁ〜っとアルフィンはため息をついて、
    「も〜〜、一緒に入ろって事!!」
    「・・・・・あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
    ジョウは5〜6歩分一気に飛びのいた。
    「な、な、な、ななななななななななななななななななな!!!」
    ジョウは真っ赤になって、なにを言ってるんだ!!と言おうとしたのだが、ろれつが廻らない。
    「だーかーらー、この格好で!!」
    襖から全身を出したアルフィンは、ブルーのビキニ(水着だよ。)を着ていた。
    「ねぇ、なに想像してたの?」
    アルフィンは小首をかしげて、悪戯っぽくジョウを見た。
    「バ、バカ!なにも想像してねーよっ!!」
    真っ赤になったまま、ジョウがぶっきらぼうに言った。
    「俺は水着なんか、持ってきてないぜ。だから、1人で入りな。」
    「もう!最後まで聞いてよ。私、3人の水着も持ってきたの。用意、いいでしょ?ね、一緒に入ろうよー♪」
    むぅーっとしていたが、ジョウはタロスの言葉を思い出した。オフ初日である。アルフィンの機嫌を損ねるのはまずい。水着を着るのであるのであれば、と自分を納得させた。
    「わーったよ、入るよ。」
    意を決して、ジョウは答えた。
    「きゃーん♪じゃ、早く着替えて!!わたし、先に行ってる!」
    アルフィンは、ぱぁーっと花が咲いたように笑うと、ジョウに水着を渡し、部屋用の露天風呂のほうへと歩いて行った。
    「・・・まぁ、しゃーねーよな。」
    アルフィンのあの笑顔を見れた事だし、ご機嫌取りも出来る。それに、一緒に風呂に入るのも、嫌ではない。
    (水着も着ているし。)<←着てない方がいいのか!?>
    そんな事を考えながら、ジョウは着替えを済ませた。
    「ジョウ、まぁ〜だぁ〜?」
    アルフィンが露天風呂入り口のドアがら顔を出している。
    「今行く。先、入ってるって言ったじゃないか。」
    「だって、一緒に入りたかったんだもん♪」
    アルフィンは天使の微笑みを浮かべる。
    ジョウはドキッとしたが、それをアルフィンに悟られまいと
    「ほれ、入るぞ。」
    と、早足で露天風呂へと向かった。
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■59 / inTopicNo.11)  Re[10]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/23(Sat) 19:37:24)
    「兄貴、アルフィンの機嫌取り、出来たかなー。」
    風呂場の脱衣所で、心配そうにリッキーが呟いた。
    「なーに、怒らせたままなら」
    タロスは、よっとと、着ていた服を脱ぎながら
    「今ここに、ジョウが来ている筈さ。」
    「そ、そうだよな。って、どういう事なんだ!?」
    リッキーは、分かった様な、分からない様な問いをタロスに投げた。
    「仲居のおばちゃんが、離れには“専用風呂”があるって言ってたよな。」
    「へ!?そ、そう言えばって、あ゛ーーーー!!」
    「そう言う事。俺達は“気を利かせて”出てきた訳だ。」
    にゃーっとタロスが笑う。
    「なーんだ、タロスにしては、気が利くじゃねーか。これで、ゆっくりと風呂にも入れるっ!!」
    リッキーは、やっほーと叫んで風呂場へと入っていった。
    「やれやれ、鈍感小僧はやだねー。
    ま、こっちもゆっくりとさせて貰いましょうかね。早めに戻らないようにしないといかんしな。気ぃ使い過ぎってのも疲れるぜ。」
    やーれ、やれと伸びをしながタロスも浴場へと入っていった。

    その頃、離れでは。
    「うわ、すごっ。」
    2人は目を見張った。風呂だから、そんな大したモンじゃないと思っていたからだ。<日本の風呂を甘く見てはいけないのだ。>
    目の前には、竹で編まれた衝立が建て掛けてあり、隙間からは、下に流れる川辺が見える。周りは美しい雪化粧した竹やぶ、木々が見える。
    露天風呂は広かった。8畳ほどの広さがあるだろうか。子供用のプールでもおかしくない。それに、周辺にはシールドが施されているのだろう。ここだけ雪が積もっていない。
    「きゃん、いっちばーん♪」
    アルフィンはザブンと湯船に入っていった。
    「んーー、気持ちいい!」
    すぃーっと湯船に体を浮かべる。
    それを見て、ジョウも湯船に浸かる。
    「ふぅー。」
    ジョウは、息を長めに吐くと、岩場に寄りかかった。
    はしゃぐアルフィンを見ながら、無邪気に喜んでと、ジョウの顔が緩む。
    そんなジョウを見てか、アルフィンがすぅーっとジョウに近づいてきた。
    「ねぇ、こんなもの持ってきちゃった♪」
    にやっと笑ってアルフィンが取り出したモノ。
    ずる、ぶくぶくぶく。それを見たジョウは、湯船に沈んだ。
    「ねー、なんで沈んじゃうのよー。お部屋に置いてあったんだから、いいじゃないの。ちゃんと、コップ(お猪口)みたいなのも付いてたしぃー。ねぇー、ジョウってばぁー。ちょっとしかないんだから、大丈夫よぉー。」
    アルフィンが持ってきたモノ。それは、お盆に載せられた300ml入りの冷酒瓶だった。お猪口は2つ。残りのお猪口は、部屋に置いてきたのだろう。
    や、やばい。酔わせたらやばい。場所も悪い。な、なんとか気をそらせなきゃ・・・。ジョウは必死で考えた。
    「もー、飲もーよー、一人で飲んでも楽しくなーい!!」
    アルフィンの機嫌が悪くなる。まずい。ジョウは名案!?を思いついた。
    「わかったよ、付き合うよ。」
    そう言って、アルフィンからお猪口を受け取った。
    「ん、初めからそう言えばいいの!はい、どうぞ♪」
    アルフィンはニッコリ笑って、ジョウのお猪口に冷酒を注ぐ。
    「俺が注いでやるよ。」
    ジョウはアルフィンから瓶を取ると、もう一つのお猪口に冷酒を注ぐ。
    「ありがと♪じゃ、かんぱーい♪」
    ぐいっと2人は、一気に杯をあけた。
    「お、おっいしー♪癖があるって聞いてたけど、フルーティーで飲みやすいわ。」
    「そうだな。思ったより軽めの酒なんだな。」
    ジョウは内心ホッとした。しかし、念には、念をいれて・・・だ。
    「ね、もうイッパイ♪」
    アルフィンはお猪口に2杯目を継ぎ足していた。
    2杯目をくいっと飲むアルフィンを見て、
    「俺にも、注いでくれよ。」
    2杯目をせかす。
    「はい、はい。」
    アルフィンは上機嫌で、ジョウのお猪口に酒を注ぐ。
    ついでに、3杯目をじぶんのお猪口に注ぐ。ペースが速い。
    「や、やばい・・・。アルフィン、注いでやるから、瓶貸せよ。」
    そう言うと、ジョウはアルフィンから冷酒瓶を取り上げた。
    「ま、嬉しいわ♪」
    アルフィンに4杯目を注ぐと、
    「後は、俺がもらうな。」
    そう言うとジョウは、瓶に残っていた液体を一気飲みした。・・・ジョウの作戦。それは、アルフィンに何杯か飲ませたあと、自分が残りの酒を一気飲みする事だったのだ。
    「あ゛ーーーー、ジョウ、ずっるーーい!!」
    ばか、それ以上飲ませられるか。・・・・・危なすぎて。
    「んもー。ま、しかたないか。後でおばちゃんに持ってきてもらおーっと♪」
    げっ、まずい。それは困る。後でタロスとリッキーに話して、絶対阻止しなければ大惨事、間違いなし!!である。
    「んーーーー、気っもちいいーーーー!」
    すぃーっと体を温泉に浸けて、ぷかぷか浮かんでいる。
    「やれやれ。」
    ほっとしたジョウの目に、小さな白い妖精がふわふわ落ちてくる光景が入った。
    「雪、か。アルフィン、上、見てみろよ。」
    目を閉じて浮かんでいたアルフィンは、ジョウの声で目を開けた。
    「うわっ、綺麗・・・。」
    ほぅと、ため息をつき、ジョウの方へよって来た。そっとジョウの腕に寄りかかり、上を見上げる。酒のせいか、頬がほのかに赤い。
    「ああ、綺麗だな。」
    ジョウはアルフィンの方を見ながら言った。
    雪が綺麗なのか、アルフィンが綺麗なのか・・・。ジヨウは自分が言った言葉に照れまくって真っ赤になった。
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■60 / inTopicNo.12)  Re[11]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/27(Wed) 21:13:20)
    しばらく2人は雪を見ていた。どれくらいたっただろう。
    「ジョぉーお」
    ぎく。声色が変ってる。ジョウは恐る恐る、アルフィンを見た。
    アルフィンの顔は桜色を通り越して真っ赤。目は据わっている!!
    「にゃんだか、ふぁ〜ってすりゅんだけど、でも、気持ちいいにぁ〜♪」
    やばい。酔ってる。が、ここで少しでも機嫌を損ねた日にゃぁ〜、とんでもない事になってしまう。しかし、おかしい。そのなに飲ませてないはず。度数も・・・と空き瓶を拾って見たジョウはほろ酔い気分もぶっとんだ。記載されている度数は“14度”。ビールと同じ、4〜5度だと思って、お猪口4杯も飲ませてしまった。おまけに、ここは風呂である。湯に浸かっていると、血行もよくなる。もちろん、アルコールの回りも良い。っつー事は酔うのも早い。今のアルフィンの状態は必然が重なってできあがったものである。
    「ねぇ〜ぇん♪ジョウ♪」
    焦るジヨウとは逆にアルフィンはご機嫌である。更にジョウにぴたりとくっつく。
    だから、胸があたってる、あたってるんだってばぁーーー!!(激焦)
    「あ、あのね、アルフィン・・・・。」
    焦る茹蛸ジョウ。
    「なぁ〜に?ジョウ♪」
    ご機嫌な酔っ払いアルフィン。
    「あ、上がろう。タロスとリッキーも戻ってくる頃だ。」
    なんとか風呂から上がらなきゃ、まずい。このままじゃ、茹って倒れちまう。・・・俺が。
    「え゛ー、もう上がりゅのぉ〜。」
    ぶーっとふくれるアルフィン。
    「そ。これなら、文句ないだろ。」
    茹蛸ジョウはヤケクソになった。
    「きゃ、いゃ〜ん。」
    ジョウはアルフィンを抱きかかえて(お姫様抱っこね。)風呂から出た。
    アルフィンはジヨウの首筋に腕を廻してしがみつく。
    「こ、こら、あんまりしがみつくな!」
    ジョウの頭からは今にも蒸気が噴出しそうになっている。
    「だって、おちたらやらも〜ん♪」
    アルフィンはそう言うと、更にしがみつく。
    「あ゛ー、好きにしてくれ。」
    ジヨウは諦めた。もうちょっとだ。脱衣場まであと数歩。
    「<やれやれ、やっと着いた。ほっ>ほれ、降ろすぞ。」
    そう言って、アルフィンを降ろそうとしたジョウの頬に
    「はい、お・れ・い♪」
    ちゅ。アルフィンの唇が降ってきた。
    「*****xxxxxx!!!!!!!!!!!!」
    ジョウは言葉にならない悲鳴(!?)をあげた。
    きゃははははは、と笑いながら部屋に入っていくアルフィン。
    ジョウは脱衣場でパニくる茹蛸に成り果てていた。
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■62 / inTopicNo.13)  Re[12]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/30(Sat) 16:47:45)
    「兄貴、うまくやってるかな〜。」
    本館の大浴場の湯船に浸かりながら、リッキーは呟いた。
    「大丈夫だよ。・・・お前じゃないんだから。」
    タロスはがははと笑って、リッキーを湯船に沈めた。
    「うぶ、ぶくぶく、ぶっはーーー、あにすんだ、このデカブツゴリラ!!!」
    「てめーが、いらん心配なんかするからだ、このチビダコ!!」
    「くぅおのー、言わせておけばぁーーー!!!」
    いつもの通りと言えば、いつもの通りだが、ここは公共の場である。他に人がいたらまずい。だが、幸いにも、この2人以外には入浴客はいないはずであった。・・・が。
    「あ゛ーーー、喧嘩はいけません、いけませんってばぁーーー!!」
    なさけない声がした。ビックリして2人が振り返ると、腰にタオル1つしておたおたしている番茶がいた。
    「だ、だめですよぉー、せっかく楽しく過ごしてもらおうと思っているのに、喧嘩なんかしちゃ、楽しいはずの旅行がだいなしになりますよぉー。」
    微妙に言葉の言い回しが変になっている。動揺しているらしい。
    2人の喧嘩を日頃から見慣れているジョウやアルフィンならまだましも、始めて見る番茶にとっては、いまにも殺し合いを始めそうな勢いに見えたのかもしれない。
    「げ、番茶・・・、お前も入ってたのかい。」
    いつものペースを崩されたリッキーがぐったりして言った。
    タロスはめんどくさがって、湯船から上がり、サウナルームの方へ逃げていった。
    「“タ、タロス、ずっりーーー!”なんで、番茶がここにいるのさ。」
    リッキーはしょうがねーなぁー、といった具合に番茶に話しかけた。
    「いえね、今が空き時間になったんですよ。もうすぐ、お食事の時間でしょ?で、その後、よろしければナイタースキーにご案内しようかと。ま、本館の方にも遊ぶ施設はありますが、今日はゲレンデ状態が大変良いそうなので、いかがですか?」
    「そーだなぁー、おいらは行くよ。後の3人には、メシん時に聞いてみる。スキーウェアと板の用意、一応全員分しといてくれよ。どうせ、泊まってる間に行くんだし。」
    「そうですね。後でフロントの者に届けさせます。で、ジョウさんはいらっしゃらないんですか?」
    番茶は周りをキョロキョロして、ジョウの姿を探していた。
    「ああ、兄貴は部屋風呂使うってさ。アルフィンと離れに残ってる。」
    「え、お2人だけ、残ってらっしゃるんですか?」
    「ああ、そうだけど。」
    驚いている番茶を見て、リッキーは思い出した。そーいやーこいつ、アルフィンに・・・。
    「で、でも、ご家族4人、仲がいいですねぇ〜。」
    「は?おいら達、家族じゃないぜ。ま、家族みたいなもんだけどなぁー。」
    リッキーは頭をポリポリ掻いて言った。
    「へ?ご家族じゃないんですか?」
    更にビックリした番茶は、リッキーに迫った。
    「げ、ば、番茶、迫るな!!」
    リッキーは引いた。
    「あ、すいません。あの、タロスさんがお父さんで、3人様がご兄弟だと・・・。」
    番茶の目はぐるぐると廻っている。驚きあまって、混乱しているらしい。しかし、どうやったらジョウ、アルフィン、リッキーが兄弟に見えるのであろうか?
    「全然、似てねーじゃねーか。それにタロスが親父じゃ、おいらが可哀想すぎるぜ。」
    「あんだとー!」
    そこへ、ひょっこり戻ってきたタロスが、再びリッキーを湯船に沈めた。
    「うぁっ、ぶくぶく、あにすんだ、このクサレダコ!!」
    リッキーが今にもタロスに突っかかって行こうとした時、
    「あ、あの〜、喧嘩はやめて〜・・・」
    あまりにも情けない番茶の声がした。2人は毒気を抜かれて肩をがっくりと落とした。
    「あのな、俺達クラッシャーは、チームを組んだ者が家族になるんだ。本当の家族とはちょいと違うが、絆はそれ以上かもしれん。」
    しゃーないと言わんばかりに、タロスが番茶に説明した。
    「じゃぁ、4人様、全員他人同士で。」
    「そーゆー事。でも、おいら達は他人って思ってないぜ、家族だと思ってる。他のクラッシャーもそうだぜ。」
    「じゃ、皆さんは生粋のクラッシャーで。」
    「いいや、生粋はジョウとタロス。おいらとアルフィンは途中から。」
    「え、あんなに美しく、繊細な方がわざわざ危険な仕事に・・・。」
    げ。美しい。繊細。えっらい誤解だ。ま、百歩譲って美人は否定しないって事で。
    リッキーとタロスは頭を抱えた。酒乱のアルフィンを見ても、こいつなら言いかねない。
    「アルフィンは、兄貴に惚れてクラッシャーになった変り種なの!クラッシャーになる前は、あれでも一国のプリンセスだったから驚きだよなぁ〜。」
    「え、プリンセスでらしたんですか!!ああ、やっぱり、気品があると言うか、上品さがにじみ出てるというか、なにか他の女性と違うと思ってたんですよ!!」
    うっとり。番茶の目はきらきらと輝いている。ジヨウに惚れてってトコだけすっとばして聞いたらしい。
    ・・・・・・。タロスとリッキーは絶句した。ここまで、妄想(!?)がすごいやつは見た事がなかった。そして更に番茶は続けた。
    「ええ、彼女は私の理想の女性なんです。一目彼女を見た瞬間に、こう、ビビビッときたんです!ああ、この人こそ、私の運命の女性だと!!」
    ・・・おいおい・・・。2人の目は点になった。
    「あ、あのさ、運命の女性とかなんとか言ってるけど、おいら、言ったよな、アルフィンは兄貴、ジヨウに惚れて、クラッシャーになったって。」
    「あ゛ぁ゛そうなんですか?!ああ、いきなり失恋でないですか〜〜〜〜(T−T」
    リッキーの言葉を聞いて、番茶はいきなりおいおい泣き始めてしまった。
    ずる。ぶぐふぐぶく。あまりの情けなさに2人は大浴場に沈没してしまった。
    「な、なら、お部屋にお二人だけってのは危ないんじゃ・・・。」
    いきなり番茶がおろおろして言う。
    「どっちかってーと、危ないのは兄貴だな。」
    リッキーが腕を組んで、うんうんとうなずいた。
    「へ?なんでですか!?女性であるアルフィンさんの方が危ないですよ!!」
    なぜか番茶は必死である。このままだと、離れにすっ飛んでいきそうな勢いである。まずい。絶対まずい。そうなったら、リッキーとタロスが殺される。・・・アルフィンに。
    「絶対大丈夫だって。兄貴はそんな男じゃないって。おいら達が保障するって。」
    リッキーが慌てて番茶に言った。するとタロスが、
    「もう少ししたら俺達も離れに帰るから。あんたもこの後の準備をしといてくれ。夕食が終わったらロビーにいるから、声を掛けてくれ。」
    上手い具合に、番茶に番茶本来の仕事の話をした。仕事の話をすれば、少しは冷静さを取り戻すだろうとタロスは思ったのだ。
    「あ、ああ、そうですね。そう、スキーウェアと板の手配もしとかないと・・・。で、では、お先に失礼します。」
    少し!?正気(か?)に戻った番茶は、ふらふらしながら大浴場を後にした。
    「タロス、ありゃ〜大丈夫だと思うかい?」
    はぁ〜っとため息をつきながら、リッキーが言った。
    「いんにゃ、あんな変なのに当たった事がねぇーから、分からん。」
    タロスはリッキーより大きなため息をついた。
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■69 / inTopicNo.14)  Re[13]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/12(Fri) 21:57:34)
    「リッキー、戻るぞ。」
    ざばぁ〜っと湯船からタロスが上がった。
    「も、もう、戻っても大丈夫かな?」
    少々びびり気味のリッキー。
    「あんまりのんびりしてても、番茶が乱入しかねんしな〜・・・」
    「げ、そりゃまぢい。いっちゃん、まぢい!」
    「だろ?それに、じき飯だ。ほっといてもおばちゃんが飯もって離れに来る。」
    「そだな、じゃ、戻ろう!」
    ざばぁ〜っとリッキーも湯船から上がり、脱衣場へダッシュしていった。
    「あーあ、こいつも単純だね〜。」
    やれやれと言った風にタロスも脱衣場に向かった。


    その頃、離れでは。
    「じょぉおおおおーーーー!」
    ・・・・・アルフィンはジョウを呼んでいる。
    着替えを済まし、トレーナーにGパン姿のジョウがアルフィンに答える。
    「なんだよ、着替え、済ましたの・・・・かぁぁぁぁぁ!!!!!!」
    最後の言葉は絶叫に近かった。なぜなら。
    「上手く、着れにぁいぃぃぃぃにょぉぉぉぉよぉぉぉ!」
    アルフィンは下着は辛うじて着けていたが、その上に浴衣を羽織ってるだけ!の状態であった。もちろん帯はしてないわ、片袖はずしてるは、あられもない姿であった。
    ジョウは真っ赤になりつつも、(すでに頭上からは湯気出まくり状態)
    「ほ、ほ、ほ、ほら、ちゃんと着てくれ、こっちの袖に腕通して!」
    なんとかアルフィンにまともに浴衣を着せようと四苦八苦している。
    「いやぁぁぁ〜〜〜〜ん♪ジョウったらぁぁ〜〜〜♪」
    逆にアルフィンは面白がって、くねくね体をしならせる。
    ああ、生殺し。<誰がだ!笑>
    なんとかアルフィンに浴衣を着せ終え、へたへたとその場にへたり込むジョウ。
    「ありがろねぇぇ〜〜♪」
    へたり込んでるジョウに抱きつくアルフィン。酔っ払いに怖いものなし。
    ジョウは反撃する気力も失せ、されるがままになっている。
    そこへ。
    「ただいまぁ〜〜!」
    リッキーとタロスが戻ってきた。このとき、ジョウは2人が神(!?)に見えた。
    「兄貴〜、ヴぁ!お、お邪魔でした!!」
    ジヨウに抱きついてるアルフィンを見て、リッキーは逃げるように部屋から出ようとしたが、タロスが邪魔で外へ出れない。
    「リッキー、早く部屋へ入れよ。ジョウ、戻りました。」
    と、ジヨウの方を見たタロスの顔色が変った。
    「も、もしかしなくても、アルフィン、酒、飲んでますか?」
    恐々、ジヨウに尋ねる。
    「あ、ああ、度数が軽いと思って飲ませたら、とんでもない事になっちまった。」
    いつもなら、リッキーかタロスが生贄(!?)になるのだが、今回は2人共いなかった為に、ジョウがとばっちりをくった。自業自得だが。
    3人がおろおろしていると、
    「失礼しても宜しいですか?」
    入り口に仲居が3人、夕飯を持って来ていた。
    「は、はいはい、どうぞ入って下さい!」
    リッキーが飛び出して、仲居を招きいれた。
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■70 / inTopicNo.15)  Re[14]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/14(Sun) 21:14:16)
    仲居達は夕飯の支度をすませると、
    「どうぞ、ごゆっくり。」
    と言って、席をはずした。
    「あ〜、腹減った。もう、ぺっこぺこ!くうぞぉ〜〜♪」
    リッキーは張り切って自分の席に着き、いっただきまぁーすと叫んでガツガツ食べ出した。
    「あー、飢えたガキはやだね〜〜。」
    タロスはそう言いながら、自分も席に着いた。
    「おい、アルフィン、飯がきたぞ。」
    ジョウは自分の腕にしがみ付いているアルフィンに声を掛けたが、反応がない。
    「アルフィン?」
    ジョウはアルフィンの顔を覗き込むと、
    「・・・。寝てる。」
    リッキーとタロスに言った。
    「兄貴、そのまま寝かしといた方がいいって。起きたら、また飲みだすし。その方がやばいよ。」
    「そうですな。“寝た子は起こすな”っていいますからな。」
    2人は、あからさまにホッとした態度を取った。そりゃ、そうであろう。酒乱のアルフィンの餌食になりたいヤツなんて、この世にいない。(あ、番茶がいた<爆>)
    「そうだな。じゃ、寝かせてくるよ。」
    ジョウはそう言って、アルフィンを抱き上げ、2階の寝室へと向かった。
    「タロス、今回はラッキーだったな。アルフィンの餌食にならずに済んで、飯もゆっくり食えて♪」
    「あぁ、そうだな。酒飲んだアルフィンに付き合うのだけはごめんだからな。」
    めずらしく、リッキーに同意する。
    「でも、兄貴は大変だったろうな〜。」
    「ま、飲ませたのはジョウだから、しょうがなかったんじゃないか?」
    わははははと大笑いをした2人だが、すぐバカ笑いをやめた。
    「いまのでアルフィン、起きなかったよな?」
    びびりながらリッキーが言う。
    「大丈夫だろ。起きてたら、ジヨウがなんか言ってる。(叫んでるだろ。)」
    タロスも恐々している。
    「静かに食おう。」
    2人は声を揃えて言った。


    ジョウはアルフィンをベットに横たえて、布団を掛けてやった。
    「・・・、寝てたら可愛いんだけどな〜。」
    クスリと笑って、アルフィンの頬にかかった髪を指先で整える。
    「お休み。」
    ジョウはそう言って、アルフィンの頬にキスをして1階に下りていった。


    「さて、食ったらどうするんだ?」
    食事をしながらジョウは2人に聞いた。
    「いえね、風呂で番茶と会いまして。成り行きでゲレンデに行く事になったんですわ。ジヨウはどうしますか?」
    タロスは風呂場での経緯をジョウに話した。
    「う〜ん、行ってもいいが、アルフィン1人置いてくのもな。」
    「そーだよな〜、起きて誰も居なくってさ、アルフィン置いて遊びに行ってましたって言った日にゃ・・・・3人共殺される事間違いなし・・・だよな。」
    リッキーが蒼くなって言う。
    「じゃ、誰か残るって事ですな。で、誰が残りますか?」
    タロスがリッキーとジョウを見る。
    「う〜ん、俺が残るよ。今日は疲れた(精神的に)から、部屋でのんびりしてるよ。2人で行ってこいよ。」
    「兄貴、いいのかい?」
    「ああ、まだ来たばっかだし、明日にでも滑りに行くさ。」
    「すいませんね、じゃ、行ってきます。おら、いくぞチビスケ!」
    「チビスケだけは余計だい!!このデカブツぢぢい!!!」
    「あんだとぉ〜〜〜!!」
    話がついた所で2人が“いつもの”を始めた。
    「やめろ!アルフィンが起きる!!!」
    いつもなら止めないのだが、ここで大声を出したら“寝た子”を起こしてしまう。それだけは絶対に阻止しなければならない。
    「あ、すんません・・・。」
    はっ!っと2人共縮こまった。普通の声なら問題ないのに
    「じゃ、行ってきます。」
    囁くような小声でジョウに断りを入れて、タロスとリッキーは出て行った。
    「やれやれ、行ったか。」
    う〜んと伸びをして、フロントにコールする。
    「食事が済んだので、下げてくれないか?」
    コール後、すぐに仲居がやって来た。
    「お一人分、お手を付けてらっしゃらないのですが、いかが致しましょうか?」
    気を利かせて、仲居が聞いた。
    「ああ、痛まないものだけみつくろっておいて置いておいてください。」
    「はい、じゃ、他の物はお下げ致しますね。」
    仲居はテキパキと片付けて
    「じゃぁ、失礼します。お休みなさいませ。」
    と挨拶をして、出て行った。
    「さ〜て、ゆっくりするか。」
    ジョウはリクライニングチェアーに腰掛け、TVのスイッチを入れた。画面は日本の“相撲”をやっていた。
    「へ〜、面白い格闘技だな。いままで見た事ないや。」
    今後の参考(!?)になるかもとジョウはチャンネルをそのままにした。
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■71 / inTopicNo.16)  Re[15]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/19(Fri) 21:20:58)
    「・・・ん゛〜〜〜〜ん、あれ、私、なんでベットで寝てる訳?」
    むくり。アルフィンはベットから起き上がる。
    「えっと、ジョウとお風呂に入って、お猪口何杯飲んだっけ?あれ?そっから先、・・・覚えてないや。あー、おなか減った。ご飯、まだかな?」
    ぶつぶつ言いながら、ベッドルームから階下に下りる。
    「あ、起きたか?」
    ジョウがアルフィンの方を向いて声を掛ける。
    「あれ、リッキーとタロスは?」
    アルフィンは部屋の中をキョロキョロ見渡す。
    「あいつらはゲレンデに行ったぜ。」
    ジョウはTVのボリュームを下げた。
    「え〜〜〜〜!2人で遊びに行っちゃったの〜〜〜〜!?」
    「だってアルフィン、寝ちまってたじゃないか。それより、腹減っただろ。飯、取ってあるから食っちまえよ。」
    「あ〜ん、ご飯まで食べちゃってるし〜〜。」
    ぶ〜〜〜っとふくれっつらをしているアルフィン。
    流石にまずいと思ったのか
    「だから、俺が残ってるだろ?あの2人には、俺が行っていいって言ったんだ。」
    「ん〜〜〜ま、しょうがないわね。寝てた私も悪いんだし。」
    「そーそ。さ、早く飯、食っちまえよ。」
    「そーする。あー、お腹へった!」
    アルフィンはそう言うと、机の上に置いてあった夕食をパクつき始めた。
    「あ〜、おいし。温かかったら、もっと美味しかっただろうな。起こしてくれればよかったのに。」
    そう言うと、ジッとジョウを見る。
    「起こしたさ。でも、起きなかったし。そのまま、ベットまで運んでやったんだぜ?」
    「え、運ばれたのに、起きなかったの?」
    ビックリした様に聞き返すアルフィン。
    「ああ、よく寝てたな。」
    ジョウはクスリと笑う。
    「も〜〜〜、何かしなかったでしょうね!?」
    ジロリとジョウを見るアルフィン。
    「手、出してほしかったか?」
    ニヤリと笑って、アルフィンを見るジョウ。
    「うっ。」
    二の句が次げないアルフィン。
    「ほれ、ブツブツ言ってないで、さっさと食えよ。食事が済んだら、タロス達の後、追ってみるか?」
    「ん〜、食べてから考える。」
    「そうだな、って、あーあ、終わっちまってるよ、相撲。」
    ジョウはアルフィンと話だしたものだから、TVを観てなかった。
    「相撲?」
    「ああ、日本の格闘技だと。裸の男と男が戦ってたな。レスリングみたいなもんかな?体格はかなり違ったけど。」
    「あー、私、サッカーとか、バスケの方がいいわ。」
    ジョウの説明を聞いただけで、アルフィンは私はいいって顔をした。
    「俺、も一回風呂に入ってくるわ。ゆっくり食ってろよ。」
    ジョウはそう言うと、座椅子から立ち上がった。
    「え〜、私、1人にするの〜?」
    いかにも寂しそうに言うアルフィン。
    「ここの内風呂だから、文句言うな。なんなら、一緒に入るか?水着無しで。」
    「え゛?」
    アルフィンは真っ赤になる。さっきから、ジョウのペースで引っかき回されてる。
    「冗談!じゃな。」
    ジョウはわははと笑って、内風呂へ行ってしまった。
    「もー、バカ。」
    アルフィンは真っ赤になったまま、目の前の夕飯を片付け始めた。
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■74 / inTopicNo.17)  Re[16]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/28(Sun) 19:54:54)
    「なあタロス、兄貴はああ言ったけど、良かったのかな?」
    気の毒気にリッキーが言う。
    「おんや〜、いっちょ前に気ぃ遣ってんのか?お前にしちゃぁ、上出来だね。」
    へへへと笑いながらタロスがちゃかす。
    「そりゃそうだよ。アルフィンはともかく、兄貴はいつも自分を後回しにするじゃないか。たまには兄貴にゆっくりと遊んでもらいたいといつも思ってるんだけど、なかなか上手く言い出せなくってさ。」
    ぶすぅー、とふくれてリッキーが言う。
    「ほぉー、なかなか言うじゃねぇか。感心、感心。」
    本当に感心したようにリッキーの頭をバシッと叩く。
    「ってーな!!あにすんだよ!?」
    いてて、と頭を抑えるリッキー。
    「大丈夫さ。ジョウはちゃんと分ってるよ。それより、アルフィンと2人きりにさせとくのも心遣いだと思わねぇか?」
    ニヤァっと意味ありげな笑いを浮かべるタロス。
    「はぁ〜???」
    首を傾げて考え込むリッキー。
    「ガキは知らなくていいの!」
    バキッ。再びリッキーは、タロスの鉄拳の餌食になった。


    母屋のロビーでは、番茶がソファーでコーヒーを飲みながらタロス達を待っていた。
    「あ〜、食後のコーヒーはおいしいなぁ〜♪」
    本当に幸せそうな顔をして、コーヒーを飲んでいる。まったく悩みがなさそうだ。
    「おーい、番茶!」
    リッキーが声を掛ける。
    「あ、リッキーさん、タロスさん。あれ、ジョウさんとアルフィンさんは?」
    2人しかいないので、キョロキョロジョウとアルフィンを探す番茶。
    「ああ、アルフィンが酒飲んで寝ちまったもんだから、ジョウが残ったんだ。」
    タロスが説明する。
    「え゛、・・・2人きり。ま、まずいんぢゃないですか!?」
    おろおろする番茶。
    “そーいやー、こいつ、アルフィンをまだ諦めてなかったんだ・・・。あれだけ兄貴との仲を忠告してやった上に、<失恋だー>って泣いてたのに、すっかり忘れてやがる。突発性健忘症か!?こいつ・・・。”
    リッキーがこんな事を考えているうちに番茶はさらにエスカレート。
    「も、もう起きられてるかもしれないじゃないですか?は、離れまで迎えにいってましょうよ。」
    “げ、やめろ。酒乱のアルフィンに鉢合わせすんのだけは嫌だ。な、なんとかしてくれー!!!”このリッキー心の叫び!?がタロスに聞こえたかどうか。
    「いや、いい。もう、ジョウに任せてきてるし、寝てるのを起こすのもな。出掛けに寝たばかりだったから、時間的にもまだ寝てるだろうし。起きたら追いかけて来るかもしれんだろ?それに、うちのチビ助が早くゲレンデに行きたがってるだ。すまんが、急いでくれないか?」
    おろおろするリッキーとは逆に、妙に落ち着いてるタロス。<内心はかなり焦っているのだが。>
    それでも、なんとか離れのアルフィンの所へ行きたい番茶。
    「でも〜〜〜」
    と引っ張る。
    タロスの意図を感取り、リッキーがあわてて繋ぐ。
    「そ、そうそう、早く行きたいんだよ。な、番茶、ウェアはドコ?板は?ほらほら、早く行こうぜ?」
    行かれちゃまずいリッキーはなんのかんのと捲し立てて、番茶をロビーの方へ引っ張って行く。
    「やれやれ、仕事で気を使い、オフまで気を遣わんといけんとは。・・・疲れるぜ。やれやれ。」
    はぁ〜っとため息を付きながらタロスもリッキーと番茶の後を追った。
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■77 / inTopicNo.18)  Re[17]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/01(Wed) 22:41:42)
    「うーん、食べた、食べた♪美味しかった。ごちそうさま。」
    アルフィンはひとごこちつき、よいしょと立ち上がった。
    「んー、ジョウはまだお風呂よねー。さて、何しようかしら。」
    一寝入りしたものだから、眼が覚めてしまった。
    「なにか面白い番組、ないかしら?」
    何気にチャンネルをポチポチ弄る。
    「何も無いわねー、チャンネル数は多いけど。」
    文句を言いながらそれでもチャンネルを弄る。
    何回ボタンを押しただろうか?
    「あぁ〜ん♪いゃ〜あん♪だぁめぇ〜ん♪」
    悩ましげな女の声、絡み合う男女。
    ボタ・・・。
    あまりの驚きで、アルフィンはリモコンを落とした。
    「い、いやぁーーーー!!なにこれぇ!!!」
    絶叫。
    そう。アルフィンは“温泉宿”特有(!?)のチャンネルを合わせてしまったのだ。・・・そう。AV(アダ○トビ○オ)である。
    「おい、なに騒いでるんだ?」
    タイミング悪く、ジョウが風呂から上がってくる。
    ぱくぱくぱく。声がでない。空気を求める金魚のように口を動かすだけのアルフィン。顔は真っ赤である。
    不振に思ったジョウは部屋をぐるっと一回り見る。もちろん、TV画面も眼に入る。
    「がっ!!」
    一言唸って固まるジョウ。こちらも見る間に真っ赤になる。
    「チ、チ、チ、チャンネル廻してたら、こ、こ、こ、こんなん出ちゃったよ〜、どうしよー。」
    アルフィンは半泣き状態である。
    「バ、バカ、は、早くチャンネル変えろ!」
    焦るジョウ。
    「リ、リモコン、リモコン無い〜〜〜!!」
    パニックになってるアルフィン。手の届く所にリモコンが有るのに目に入ってない。
    その間にも、悩ましげな声は部屋中に響く。
    「そこ、そこに有る!!あ゛ー、俺が変える!!」
    ジョウはふらふらしながらリモコンを拾い上げ、やっとの事でチャンネルを変えた。
    「はぁ、はぁ、はぁ、んで、こんな番組出してんだよ、・・・体に悪い。」
    真っ赤になりながらぶつぶつ言うジョウ。
    「ご、ごめん。まさか、こんなチャンネルがあるとは思ってなかったもんだから・・・。」
    こちらも真っ赤になりながら謝るアルフィン。
    「あ、ああ、しょうがねーな。アルフィンも、まさかこんなチャンネルがあるとは思ってなかったんだろうしな。」
    ・・・だが、俺の(!?)体に悪すぎる!!俺は聖人じゃねーんだぞ!!どうしてくれるんだよ!!!
    もんもんとするジョウ。
    「ね、ねえ、ジヨウ。私達もゲレンデに行かない?今からでも、大丈夫でしょ?」
    アルフィンがモジモジしながら言う。
    「そ、そうだな。それがいいかもな。フロントに行けば、ウェアーも、板もレンタルがあるらしいし。じゃ、着替えて行くか!」
    なんとかこの場から離れたい2人。
    「う、うん!じゃ、用意するね!待ってて。すぐだから。」
    アルフィンは隣部屋に行き、襖を閉める。
    はぁ〜。ジヨウは大きな溜息を1つ付く。
    雪にまみれて鎮めよう・・・。じゃないと、まずい。今、2人きりのままだと自分がどうなるか分らない。
    襖の向こうからはアルフィンの着替える衣擦れの音が聞こえる。これさえも今のジョウにとっては、艶かしい音に聞こえる。
    まずい・・・。早くしてくれ、アルフィン。
    焦りまくるジョウ。
    「お、おまたせ。さあ、行こう!」
    間一髪(!?)のところでアルフィンが出てきた。
    「あ、ああ。行こう。」
    まだ顔の赤いアルフィンに引っ張られ、ジョウは離れを後にした。
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■80 / inTopicNo.19)  Re[18]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/05(Sun) 16:30:01)
    その後。
    ジョウとアルフィンはゲレンデで3人と合流し、スキーを楽しんだ。
    一際色めいて楽しんだのは番茶だったが。(来ないと思ってたアルフィンが来た為。)
    結局、明け方まで滑りまくってヘトヘトになり、離れに戻ったのは朝の8時だった。
    「朝食はどうされますか?」
    電話で仲居に聞かれ、いらないと断りを入れると、4人はそれぞれベットルームに散らばり(といっても、ベットルームは3つ。)爆睡した。


    「う〜ん、今、何時・・・。」
    アルフィンが時計を見ようとすると、
    「・・・朝の7時。」
    ジョウが答える。
    「んっ、そう、まだ寝てられるね。」
    そう言うと、もぞもぞブランケットを被り直す。
    “ん〜、まだ寝てられる♪嬉しいな♪”
    そう思いながら丸まるアルフィン。
    ・・・・・・ん?????朝の7時?ってコトはまるまる1日寝てたってコト?・・・よく寝たわね〜。って!!!
    ガバッ!!飛び起きるアルフィン。横にはジョウが寝ている。
    「あ、あ、あ、あ、あぁぁぁっっっっーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
    ・・・絶叫。
    流石にぶったまげてジョウが起きる。そして、状況を理解した。
    「うっ、うわ!!ア、アルフィン、落ち着け、俺は何もしてない!!」
    慌てるジョウ。言い訳も忘れない。
    「昨日スキーから帰ってすぐ寝たじゃないか!えっと、そ、そう、電話受けてる間にアルフィン、居間で寝ちまって、俺がここまで運んで来たんだよ!」
    必死に説明する。シドロモドロだが。
    「じゃ、なんで、一緒に寝てたのよ〜〜〜!!」
    今にも枕を投げつけそうなアルフィン。
    「えっと、アルフィン運んで寝かせて、寝顔見てたら・・・、そっから記憶が無い・・・。」
    「な〜んで、私の寝顔なんかみてたのよっ!?」
    叫び倒すアルフィン。
    「えっ、あ、可愛かったもんだから、つい・・・」
    アルフィンの勢いにつられたジョウ。言ってしまった後でうわっ!!っと口を押さえた。
    「・・・えっ・・・。」
    怒るに怒れなくなったアルフィン。顔が見る間に赤くなる。
    それを見たジョウは、
    「あ、タ、タ、タロス達、起こしてこなきゃなっ!!」
    そう言うと、慌ててベットから飛び起き、階下のタロス達の所へ駆け下りていった。
    「可愛い?私の寝顔が?」
    アルフィンは自分の両頬に手を当てて、顔の火照りを感じていた。


    「・・・っ、参った。」
    ジョウは頭を抱えながら居間に下りた。
    「あーにーきぃー。」
    「ジョオーっ。」
    にまにましてジョウを見るリッキーとタロス。
    「・・・、起きてたのか。」
    芋虫を噛み潰したような表情のジョウ。
    「起きてたもなにも、あんな絶叫聞いて起きないヤツはいませんぜ。」
    「そうそう。」
    嫌味を言われる。
    「・・・、俺、ひとっ風呂浴びてくる。朝飯、頼んどいてくれ。」
    ここに居るとなにを言われるか分ったモンじゃないと判断したジョウは、そそくさと露天風呂へと逃げていった。

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■86 / inTopicNo.20)  Re[19]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/20(Mon) 22:28:30)
    ジョウが露天風呂に逃げた後。
    「兄貴のあの顔!めったに拝めないぜ。ぎゃはははは!!」
    大笑いのリッキー。
    「ばーか。お前もあんな顔ができるようになるまで何十年かかるか。いや、一生出来ないだろーなぁー。」
    こ馬鹿にした風にリッキーを見るタロス。
    「へん!おいらは未来明るい少年だからなー。どっかの枯れたジジイと違って、チャンスは山のように転がってるんだぜ。」
    へん!と胸を張るリッキー。タロスの嫌味がまったく通じてない。
    「あんだと〜〜〜!?」
    「なんだよー、やるかぁ〜〜〜!?」
    今にも取っ組み合いを始めそうになった時に、アルフィンが2階から降りてきた。
    「あんた達、朝っぱらから元気いいわねぇ〜。」
    呆れたように2人を見る。
    「ところで、ジョウは?」
    部屋の中をキョロキョロと見渡す。
    「兄貴は風呂!」
    へん!とソッポを向くリッキー。
    「はん!テメーの朝飯のオーダーはしてやんねー。」
    とフロントに朝食のオーダーを取ろうとするタロス。
    「もー、タロスも大人げないわねー。」
    やれやれという風に呟くアルフィン。
    「そーだよ、歳だけがっばがっば取ってるだけなんだよなー。」
    ここぞとばかりにチャチャを入れるリッキー。
    「こーんの、クソガキ!言わせておけばぁ〜!!」
    リッキーの胸ぐらをつかむタロス。
    「っもー、やめなさぁーーーーーい!!!」
    堪らなくなったアルフィンが叫ぶ。
    「んっもー、五月蝿いったらありゃしない!!ほら、さっさと朝食オーダーしてよっ!」
    プンプンになったアルフィン。
    「・・・朝っぱらから五月蝿かったのは、アルフィンの方じゃないか。」
    ぼやくリッキー。
    「そうそう。」
    頷くタロス。
    「・・・・・あんですってぇ〜〜〜〜!?」
    ぴくぴくと引きつるアルフィン。
    「あ、あああっしは朝食のオーダーしにフロントに行ってきますわ。じゃ、リッキー、後は頼むぞ。」
    まずいと思ったタロスは、そそくさと出て行く。
    「タ、タロス!ずっけー、電話でオーダー出来るじゃんかよー、おーい!!」
    付いて行こうとするリッキーを、むんずとつかむアルフィン。
    「あんたはここで待ってなさい!!」
    「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
    この後、リッキーはアルフィンにボコにされたとさっ♪

    しばらくして、
    「おい、すっげー悲鳴が聞こえたけど・・・。」
    ジョウが風呂から上がってきてリッキーを見た。
    「・・・リッキー、どうしたんだ!?」
    眼をまん丸にするジョウ。
    それもそのはず、顔が痣だらけになっているのだから。
    「兄貴ィ〜〜〜〜(大泣)」
    ジョウにすがるリッキー。
    恐ろしそうに、ジョウの後ろに隠れて、アルフィンを見る。
    「あによぉ〜。」
    ギロリ。とリッキーを睨み付ける。
    「・・・はぁ〜〜〜〜。」
    ため息を付くジョウ。この状況を見ると、だいたいの事は想像が付く。
    「おい、タロスは?」
    とにかく、この雰囲気をなんとかしなくてはいけない。
    「タロスなら、朝食頼みにフロントまで行ったわよっ!」
    ぷっと膨れっ面のアルフィンが言う。
    「“逃げたな・・・。”」
    うぅ、と顔面を掌で覆うジョウ。
    「兄貴ぃ〜。」
    なんとも情けない声を出すリッキー。
    「うぅ・・・。」
    唸り声しか上げないジョウ。
    「もう、なんなのよっ!!」
    いらいらしっぱなしのアルフィン。
    「・・・帰りました〜。」
    そこへ、おそるおそる戻ってきたタロス。
    歓迎したのは、ジョウとリッキー。
    「タロス!遅かったじゃねーか!」
    開口一番、文句を言うリッキー。
    「で、飯は何時頃来るんだ?」
    少しホッとした口調になるジョウ。
    「あ、ああ、すぐ、来るそうでさぁ。」
    ちらりとアルフィンの様子を伺うタロス。
    「・・・着替えてくる。」
    ムッとしながら、アルフィンは2階へとっとと上がっていった。
    「・・・誰が機嫌をとるんだ?」
    ポソッとジョウが呟く。
    リッキーとタロスはバツが悪そうな顔をしながら、ジョウを見る。
    「はぁ、やっぱ、俺か・・・。」
    ガックシ項垂れるジョウ。
    「ごめん、兄貴。」
    「すいません、ジョウ。」
    申し訳なさそうに2人が謝る。
    そこへ、
    「失礼しても宜しいでしょうか?」
    インターホン越しに仲居の声がした。
    「あ、はいはい、どうぞ。」
    リッキーが応対に出る。
    「お食事を持って参りました。」
    仲居はそう言うと、部屋の中に入り、朝食の支度をし始めた。
    「じゃ、俺はアルフィン呼んで来るよ。」
    「たのみます。」
    タロスが小さくなって言う。
    返事をする代わりに、ジョウはひらひらと手を振りながら2階へ上がって行った。

    「おい、アルフィン、入るぞ。」
    一声かけて、ジョウは部屋の中へ入った。
    アルフィンは、着替えてベットに寝転がっていた。
    「飯、来たぞ。」
    「ん。分ってる。」
    まだ少し、ご機嫌斜めのアルフィン。
    「機嫌、直せよ。」
    ジョウは腕組をし、ベット脇からアルフィンを見下ろした。
    「ふん、直ってるわよっ!」
    “直ってない・・・。”
    やれやれといった表情で、アルフィンの腕をつかむ。
    「ほれ、起きろよ。」
    ぐっと力を入れ、アルフィンを引き寄せる。
    「もー、1人で起きられるわよっ!」
    変にアルフィンが力を入れたものだから、ジョウはバランスを崩してベットのアルフィンの上に倒れこむ。
    「きゃん!」
    「あ、す、すまん。」
    すぐに身を起こして、ジョウが謝る。
    「あ、う、ううん、大丈夫。」
    バツが悪そうに、アルフィンが答える。
    「さ、飯食って、遊びに行こうぜ。」
    微笑みながらアルフィンを立ち上がらせて、ジョウが言う。
    「んっ!」
    ジョウの笑顔につられて、アルフィンも笑顔になる。
    「ね、ジョウ。」
    小首を傾げてジョウを上目遣いで見る。
    「ん?なんだ?」
    アルフィンの顔を覗き込むように見る。
    少し、頬を染まっている。
    「・・・やっぱ、なんでもない。」
    ぽそりと呟く。
    「ん〜、」
    少し考えるジョウ。
    「ね、もういいの。下、行きましょ?食事、来てるんでしょ?」
    少し焦ったようにアルフィンはドアのほうへ歩いていく。
    そのアルフィンの腕をつかんで、自分の方に引き寄せるジョウ。
    「あ・・・」
    アルフィンがなにか言おうとした瞬間、アルフィンの唇にジョウの唇が軽く触れた。
    「モーニングサービス。」
    にやっと笑ってアルフィンにウインクするジョウ。
    「じゃ、明日は私からしてあげる。」
    負けずに答えるアルフィン。でも、顔は真っ赤である。
    「という事は、今日も一緒に寝るのか?」
    意地悪げに聞くジョウ。
    「うぅぅぅぅ。」
    唸るアルフィン。
    このまま会話を続けると、また機嫌が悪くなりそうだと思ったジョウは、
    「ほれ、飯、冷めちまうぞ。」
    そう言うと、アルフィンを引っ張って部屋を出た。
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